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ちなつ「結衣先輩、大好きですよ」

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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:13:06.14 ID:s248CH3I0

あかり「結衣ちゃん、京子ちゃん」

あかり「大学合格おめでとう!」
ちなつ「合格おめでとうございます~」

結衣「ありがとう、あかり、ちなつちゃん」

京子「祝え、祝え~、あとちなつちゃんちゅっちゅ」

ちなつ「ちょ、やめてください」

この春、私と京子は大学生になった。今日はその祝賀会もとい旅行である。
飽きるほど交わしたやりとり、でもそんな時間が私は何より好きだ。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:14:03.68 ID:s248CH3I0

この春、私と京子は大学生になった。今日はその祝賀会もとい旅行である。
飽きるほど交わしたやりとり、でもそんな時間が私は何より好きだ。

結衣「コラ、京子」
京子「いてて…」

結衣「ごめんね、ちなつちゃん」

ちなつ「あ~ん、結衣せんぱぁ~い、私は結衣先輩さえいれば…」

京子「結衣と私はセットだよ!」

結衣「ねぇよ」


あかり「みんなあかりを忘れないでぇ~」

そんな微笑ましいおまけ付きで。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:14:43.96 ID:s248CH3I0

大学生といっても、私と京子は同じ大学で住む家も変わらない。
それに結局四人とも同じ高校だった。
私と京子が高1の時も週に1回は必ず集まっていたし、これからもそうだろう。
そう考えるとお別れという実感はなく、寂しさもない。

京子「あかりもちなつちゃんもまた受験生か~」

京子「ちなつちゃん、寂しくならないでよね!」

ちなつ「なりません!」

あかり「あかりはちょっと寂しいな……」

京子「ふ~ん、まぁいつでも会えるし」
あかり「え~ひどいよぉ…」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:15:17.73 ID:s248CH3I0

自分のことを『あかり』と呼ぶ幼げな顔を見ると心が安らぐ。
私たちだけが聞けるその言葉が、余計に安心に繋がるのだろうか。
視線を向ければ満面の笑顔が返ってくる。

結衣「それはそうと、二人は大学どこ受けるの?」

京子「そうだね、私たちと同じとこ?」

ちなつ「私は頑張って結衣先輩と同じところを受けるつもりです」

京子「まってるよ、ちなちゅ」
ちなつ「ちなちゅいうな」

結衣「あかりは?」

あかり「あかりは…まだ考えてないけど、みんなと一緒がいいな!」

結衣「そっか、じゃあまたみんな一緒かもね」


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:16:05.87 ID:s248CH3I0

夜、湯につかりながら空を見上ると満点の星が広がっていた。
つい言葉がこぼれる。

結衣「星が綺麗だ」

ちなつ「そうですね、でも私は結衣先輩の方が…」

京子「でもこうしてるとみんなで行った温泉思い出すね」

ちなつ「遮らないでください!京子先輩!」

結衣「…確かに思い出すよね、今回はあかりもいるし」

あかり「『今回は』って!?」


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:17:10.24 ID:s248CH3I0

目を閉じて物思いにふけると、楽しかった旅行が蘇る。
そういえば──

結衣「そういえば京子言ってたよね」

京子「うん?」

結衣「『こんな楽しい時間がいつまでも続きますように』って」

京子「あー、言ったかも」

ちなつ「確かに、そんなこともありましたね」

あかり「あかりは知らないよぉ」

結衣「はは…あかりは寝てたからね」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:17:46.63 ID:s248CH3I0

京子「んで?何々?結衣も寂しくなっちゃったのかな~?」

結衣「いや、そのときの京子の気持ちが、本当に分かったような気がする」

結衣「私も今、うん、そう思うから」

ちなつ「きゃ~、結衣先輩、私もですぅ」

京子「そうだね、思い出は永久に…なんてね☆」



京子「なんでみんな無言!?」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:18:22.09 ID:s248CH3I0

月日は流れ、大学生活が始まっても驚くほどいつもと同じ日常が待っていた。
四人で会うたび、本当に何も変わって無いことを実感する。
季節は夏を迎えていた。

結衣「京子、おい京子起きろ、講義始まったぞ」

京子「むにゃむにゃ、も少し~」

京子「後でノートコピーさせて…」

結衣「全く…」

授業のたびにこれでは先が思いやられるが、これも変わらない日常と受け入れる。


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:18:57.33 ID:s248CH3I0

結衣「講義終わったぞ」

京子「……思いついたー!!」

結衣「うぉあ!びっくりさせるな!」

京子「夏休みにみんなでまた旅行に行こう!」

結衣「そりゃまた突然だな…」

京子「いやぁ~、最近忙しいし夏休みくらいはと思ってね」

結衣「それは勉強でなのか…?」

京子「あと、あかりとちなつちゃんに会えなくなるだろうし」

結衣「話題をそらすな」

結衣「…まあ確かにこれから二人とも受験勉強でいそがしくなるし、いいと思うよ」

京子「さっすが結衣!じゃあ私は結衣のノートをコピー…」

結衣「おいおい…」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:19:27.43 ID:s248CH3I0

実際、試験勉強やら何やらで二人とは最近会っていない。
二人は二人で一緒に勉強しているということだが。
私は中2の夏の事件を思い出した。

ちなつちゃん家の玄関で──

あの日の翌日、
涙目で違います違いますと私に言い寄るちなつちゃん。
そしてなぜかそのちなつちゃんを大丈夫だから、ねと慰めるあかり。
それを見て二人をからかう京子。

あの出来事を思い出すたびに微笑ましい気持ちになる。
本当に仲がいいんだな、と私は思う。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:20:00.96 ID:s248CH3I0

記憶をたどるうちに自然と画面に表示させていた『吉川ちなつ』の文字を見て顔がほころぶ。
それは、せっかくだからメールではなく電話をしようと動機付けられるのに十分だった。


結衣『ちなつちゃん、ごめんね忙しいときに』

ちなつ『いえいえ、大丈夫ですよ』

ちなつ『それで、何のご用ですか?』

結衣『あのね、夏にまたみんなで旅行に行かないかって』

ちなつ『京子先輩がですか』

結衣『うん、受験勉強とかあると思うし無理なら無理って言っていいんだよ』

ちなつ『何言ってるんですか結衣先輩!』

ちなつ『もちろん行きますよ!勉強は何とかします!』

結衣『うん…ありがとう、また追って連絡するね』


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:20:33.69 ID:s248CH3I0

いつも変わらない反応が、かえって私を申し訳ない気持ちにさせる。
高校受験と違って大学受験の夏は本当に忙しかった。自分が体験したからこそわかる。
決して断ろうともしないその姿勢は疑いもなくまっすぐだ。
高校受験のときも、何とかしますで本当に何とかしてしまった。
行き過ぎることもあるが、結局いい意味で根は純粋なのだろう。

携帯を手に、片方に電話した手前『赤座あかり』の通話を押す。
返事の一言一句がはっきりと頭に浮かび、また少し申し訳ない気持ちになる。
ただ、その反応は予想外のものだった。


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:21:53.90 ID:s248CH3I0

結衣『もしもし、あかり』

あかり『うん…もしもし…』

結衣『今大丈夫?突然ごめんね』

あかり『あ…うん、大丈夫だよ…』

結衣『本当に大丈夫?疲れてるんだったらメールにしようか?』

あかり『だ、だいじょぶだってば~、あかりはいつも元気だよ!』

あからさまな空元気。

結衣『…京子がね、夏に旅行行かないかって』

あかり『そうなの!?あかり喜んでいっちゃうよ!』

結衣『それなら良かった、じゃあ後でメールするから』

結衣『それと…』

あかり『それと…?』


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:22:28.08 ID:s248CH3I0

結衣『何か悩み事があったら私たちに言ってね』

結衣『みんな心配するよ』

あかり『え…あ……やっぱりわかっちゃう?』

結衣『うん』

あかり『…実はね』

あかり『この前の模試で大失敗しちゃって…』

少し意外だったが、その違和感は次の言葉でかき消された。

あかり『あかり、みんなと同じ大学いけないのかな』

あかり『そう思ったら、悲しくなってきちゃって…』

結衣『…あかりなら大丈夫だよ』

結衣『私は信じてる』

あかり『本当!?結衣ちゃん、ありがとう』

あかり『あかりがんばるよ!』

結衣『頑張ってね、それじゃあまた後で』


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:23:19.04 ID:s248CH3I0

旅行当日、久しぶりに会った二人が少し大人びて見えたのは気のせいだろう。
あどけなさの中の凛とした雰囲気、とでも言うのだろうか。
少しずつ、少しずつ、変わる物もある。もっとも、私も20年程しか生きていないが。
そんな考えを自嘲気味に払拭しつつ、私は二人きりになった部屋に意識を戻す。

ちなつ「珍しいですよね」

ちなつ「京子先輩があかりちゃんを引っ張って行くなんて」

結衣「そうだね」

結衣「ああ見えて強引なとこあるから、京子は」

ちなつ「…そうですね」

何か思い出したのか、くすぐったそうに笑うその仕草はとても幼い。


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:23:51.02 ID:s248CH3I0

結衣「呼び出しておいてする話じゃないけど」

結衣「受験勉強とか本当に大丈夫だった?」

ちなつ「大丈夫ですよ」

ちなつ「あかりちゃんもいますし」

ちなつ「そうそう、この前の模試でもいい点とってすっごく喜んでましたよ」

えっ、という言葉を無理やり飲み込む。
幸い気付かれてはいないようだ。

ちなつ「私は、その…アレでしたけど…」

ちなつ「だから、できれば結衣先輩に今教えてほしいなぁ~、なんて──


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:24:28.28 ID:s248CH3I0

それから先は曖昧な返事ばかりをしていた気がする。
はっきり覚えているのは目を輝かせながら勉強道具を取り出すちなつちゃんと
くたくたになったあかりを引きずり帰ってきた京子。
四人で机を囲むお馴染みの状況になったことはうっすらと覚えている。

京子「なんだか落ち着くね~やっぱごらく部はこうでなくっちゃ」

京子「お茶が飲みたいよ~、ちなつちゃ~ん」

ちなつ「自分で淹れてください!」

ちなつ「…と言いたいところですけど、しかたないですね、今日だけですよ」

京子「やたー、ありがとね、ちなつちゃん」


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:25:05.38 ID:s248CH3I0

ちなつ「…結衣…先輩…?」

ふと差し伸べられる湯呑で我に返る。

結衣「あ…ちなつちゃん、ありがと」

ちなつ「どういたしまして」

次の瞬間、自然に声が出でいた。

結衣「あかり」

あかり「ん?なになに?」

結衣「みんなに話したいこと、あるよね」

表情が凍る、そんな表現はこんな時に使うのだろう。

あかり「えっ…、そんなのないよ」

結衣「お願い」

じっと視線を向けると、困惑した顔が観念したように下を向いた。


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:29:17.93 ID:s248CH3I0

あかり「……あのね」

あかり「あかり、この夏から東京にいくの」

ちなつ「えっ!?」
京子「え~~~~!?」

あかり「AOで東京の大学受かって、それで」

ちなつ「こ、高校はどうするの!?」

あかり「付属の高校に編入って形になるって」

あかり「奨学金も出るし、東京に慣れておいて損はないって言われて」

京子「家は!?住むところあるの!?」

あかり「お姉ちゃんが東京の会社に就職したのは話したよね」

あかり「一人暮らしには家が広すぎるからって、お姉ちゃんが」

京子「なんで話してくれなかったのさ、私たち友達だろ~!?」

あかり「話さなきゃとは思ってたんだけど、なんだか言いづらくて…」


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:31:36.99 ID:s248CH3I0


結衣「そうなんだ、おめでとう、あかり」

何か言わないと、そう思って出た言葉はそれだった。

ちなつ「…そ、そうですよね、大学受かるなんてすごいよ、あかりちゃん」

京子「確かに!この時期に勉強してるなんてあかりはすごい!」

ちなつ「受験生馬鹿にしないでください!どうせ京子先輩はやってなかったんでしょうけど」

京子「まね~、そうだ、それなら今回の旅行はあかりのお別れ会にしよう!」

京子「ほらほら~行くぞ~あかり~」

あかり「ちょ、京子ちゃん、引っぱらないでぇ~」

ちなつ「仕方ないですね、結衣先輩、私たちも行きましょう」


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:32:47.57 ID:s248CH3I0

出発の日、後ろ向きに歩けと言わんばかりに何度も振り返る姿を私たちは見送った。

京子「行っちゃったね…」

ちなつ「行っちゃいましたね…」

結衣「そうだね…」

何をすればいいか分からない小さな子供のような表情で立ち尽くす二人。
いや、傍から見れば三人なのかもしれない。


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:34:50.21 ID:s248CH3I0

夏の終わりになると妙に物悲しくなるのは、多分本当のことだろう。
珍しく物思いにふけるように歩く姿が、そんな気持ちにさせる。

京子「さっきさ」

京子「家にあかりから借りたものがいくつか残ってたから」

京子「あかりの家に帰しに行ったんだよね、登校がてら」

結衣「うん」

京子「そしたらさ、ちなつちゃんがいて」

京子「自分でインターホン押して、自分でびっくりしてて」

京子「それで声かけようとしたら、ちなつちゃん逃げちゃったんだよ」

京子「これって、ちなつちゃんに嫌われてるってことのかな~、ねぇ~結衣~」

そう付け加えるのは照れ隠し。
明日、ちなつちゃん家によるからちょっと待っててという言葉を忘れるはずもない。


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:35:32.38 ID:s248CH3I0

結衣「あの二人はずっと一緒に登校してたからね」

京子「な、流すなよー」

本当に答えて欲しかったのか、とは言わない。

結衣「…中学の文化祭の話、聞いた?」

京子「聞いた、なんか記念式典があるんでしょ」

結衣「ちなつちゃん誘って行こうか」

京子「うん、ちょうどそう思ってた」


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:36:38.02 ID:s248CH3I0

久しぶりに訪れる中学校。記念とあってか懐かしい顔もちらほら見える。
学園祭見物もそこそこに部室に向かったのは当然の流れだろう。

京子「ただいま~わがごらく部ー」

京子「ってゲホゲホ、ホコリが…」

結衣「私たちが卒業してから本当に使われてないみたいだね」

京子「バビュ~ン、みてみてー、掛け軸もそのままだよ」

結衣「埃が舞うから走るな!」

全く、と言いつつ視線を下げると懐かしいものが目に入ってきた。

結衣「あれ、これ…」

京子「なになに~?あ、コレあかりとちなつちゃんの卒業のときに撮った写真じゃん」


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:38:00.02 ID:s248CH3I0

埃を払いながら手にするそれは、最期だからとインスタントカメラで撮ったもの。
部室の前、中学の制服姿で卒業証書をもって笑う二人。
その後ろで控えめな表情をつくっていた私。耐え切れず前に出て行こうとする京子。
机を囲んで三人で見ると感慨深いもので、たかだか3年前なのに、遠い昔のことのように思えてしまう。

京子「『初代ごらく部!』だって、懐かしいな~もう」

京子「ん、『大学に合格する』ってこれ結衣の字だよね、早すぎじゃない?」

結衣「そういうお前こそ『世界征服』ってなんだよ、字大きすぎだし…」

京子「あ、『ラブ イズ エターナルです!』だってさー、やっぱちなつちゃんらし…」

京子「い……、ごめん…」

ジロと私が一瞥すると、行き場を失った視線が宙を泳ぐ。

結衣「あかりのは…見当たらないね」

京子「見切れてるんじゃないの?」


35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:38:42.09 ID:s248CH3I0

まさか、とは思ったが額縁からはみ出す文字のようなものが見える。
埃だらけの写真立てを開けるのに多少躊躇ったが、それでも確認せずにはいられない。

結衣「っと、ごめん」

ひらりと写真が、向かい側から見ていたちなつちゃんの方に落ちていく。
咄嗟に手を伸ばす。



──ぽたり落ちた滴。
私の手が止まる。




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:40:47.56 ID:s248CH3I0


結衣「ちなつちゃん…」

何が起こったのか分からないといった表情とは裏腹に、はらりはらりと流れる涙。

ちなつ「あ…え……どうし…て…」

ちなつ「……ご、ごめんなさいっ」

あまりの突然の出来事に、駆け出したちなつちゃんを目で追うことしかできず、
ただ残された、伸びかけていた手が、写真を掴む。


京子「結衣!?早く!!ちなつちゃん見失っちゃうよ!」

京子「ねぇってば、結衣!?」


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:42:40.13 ID:s248CH3I0


結衣「『ずっと一緒だよ』か…」

京子「ん?何か言った?」

結衣「いや、何も」

前を歩く京子の後姿を眺めながら、夕暮れの中、一人呟く。
落ち着いたら連絡してねと家まで送った時、ちなつちゃんが見せた健気な笑顔が目から離れない。
もし、私だったら──


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:43:14.33 ID:s248CH3I0

京子「ねぇ、結衣」

年甲斐もなく縁石の上を跳ねていた姿がこちらを向く。

京子「もし私が遠くに行ったら、結衣は泣いてくれる?」

いたずらっぽく笑う顔は、どんな言葉が返ってくるか分ったように誇らしげだ。

結衣「うん」

結衣「泣くよ」

京子「ホントに!?ありが…」

目を輝かせる京子に、私は言ってやる。

結衣「京子がいないと、玉ねぎ切る人がいなくなる」

京子「ちぇー、なんだよそれー」


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:44:01.25 ID:s248CH3I0

そう言いながら、拗ねたように道端に落ちていた石を蹴る。
どこか寂しそうに微笑む横顔は、差し込む暮色のせいか儚げだ。
次の瞬間、そんな哀愁は露と消えてしまったのだが。

京子「って、あー、コンビニ!」

京子「ねぇねぇ、ラムレーズン買って」

結衣「自分で買えよ…」

結衣「…まあいいか、ちなつちゃん見つかったの京子のおかげだし」

京子「やったー、愛してるよー結衣にゃん」

結衣「その呼び方やめろ」

そんなことはお構いなしにと走り出す影が夕日に踊る。
恥ずかしげもなく白い歯を見せて笑う顔が、懐かしい日々を私に感じさせていた。


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:47:09.10 ID:s248CH3I0


結衣「うおっ、寒っ」

肌寒い朝は、季節が夏から秋になったことを実感させる。
簡単な朝食を取り、片づけと掃除をする。いつもの日常。
ただ今日は授業が全部休講となって、大学は休みである。
たまにはのんびりするのもいいか、と思いテレビをつけるべく立ち上がる。
インターホンが鳴ったのは、リモコンを手に取るのと同時のことだった。

結衣「はい、どちらさま」

結衣「って、ちなつちゃん!?」

慌てて玄関に走る。

ちなつ「結衣先輩、今日お時間ありますか?」


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:47:57.77 ID:s248CH3I0

結衣「ホットコーヒーで」

ちなつ「あ、私も同じものを」

朝早く、人もまばらな喫茶店で飲むコーヒーも乙なものである。
目の前に座っているちなつちゃんは、心なしか小さく見える。

ちなつ「無理やり押しかけてしまってごめんなさい、結衣先輩」

結衣「気にしなくていいよ、暇だったし、それにせっかくちなつちゃんが誘ってくれたから」

そう言うと、寂しげな顔に笑顔が戻ってくる。


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:49:01.83 ID:s248CH3I0

ちなつ「京子先輩って、なんだかんだで優しいですよね」

ちなつ「あの文化祭の後、毎日のように家に来ましたから」

ちなつ「しかもインタホーン使えばいいのに、大声で私のことを呼ぶんです、毎回毎回」

ちなつ「おかげで近所の人に会うたびに言われるんですよ『ああ、あの名物の子ね』って」

結衣「ははは……京子らしいね」

この分だと、普段私が居るはずのない時間に訪ねてきたのは偶然ではないだろう。

ちなつ「…ところで、結衣先輩はいつあかりちゃんの様子に気がついたんですか?」

結衣「あかり?」

結衣「っと、夏の旅行のときにちなつちゃんに電話したよね」

こくりとちなつちゃんが頷く。

結衣「そのあとあかりにも電話したんだけど、様子がおかしかったから…」


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:50:30.90 ID:s248CH3I0

ちなつ「……そうだったんですか」

ちなつ「私は全然気づきませんでした」

ちなつ「あの後、あかりちゃんに何度も謝られましたよ」

ちなつ「一番に話すべきだったのに、本当にゴメンねって」

困ったような笑顔がいたたまれなくなり、私は視線を落とす。

ちなつ「自分で自分のやりたいことを決めて、それにまっすぐで」

ちなつ「……ずるいです、みんなばっかり大人になっていくなんて」

ちなつ「私だけ子供のまま」

結衣「ちなつちゃん…」

そう言って、ちなつちゃんは砂糖も入れずスプーンでコーヒーをかちゃかちゃと混ぜる。


45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:51:49.10 ID:s248CH3I0

ちなつ「結衣先輩は」

結衣「…うん?」

ちなつ「結衣先輩は誰かに憧れたことってありますか?」

静かに首を横に振る。

ちなつ「私が最初に憧れたのはお姉ちゃんでした」

ちなつ「大好きなお姉ちゃん、その大好きなお姉ちゃんに憧れて」

ちなつ「茶道部に入ろうとして、結衣先輩と出会って、京子先輩に出会って」

ちなつ「あかりちゃんに出会って」

ちなつ「本当に楽しかったんです。毎日が」

ちなつ「もちろん、今この時間には勝てませんけどねっ」

首をすくめながら照れたように作る笑顔。
スプーンを上げると、したたる滴がカップに吸い込まれていく。


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:52:48.60 ID:s248CH3I0

ちなつ「お姉ちゃんが家を出たとき、とっても寂しかった」

ちなつ「でも、悲しくはありませんでした。どこにいても、お姉ちゃんは見守っていてくれる」

ちなつ「そう思うと勇気が湧いてくるんです」

ちなつ「不思議ですよね」

まるで溢れる言葉を飲み込むように、並々と注がれたコーヒーを飲み干し、立ち上がる。

ちなつ「さあ、結衣先輩!今日は楽しんで下さいね!」

ちなつ「たっくさん練習しましたから」


48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 20:55:22.64 ID:s248CH3I0

ちなつ「結衣先輩、今日は本当にありがとうございました」

結衣「こちらこそ、ありがとね、ちなつちゃん」

結衣「楽しかったよ」

そう付け加えると、飾り気の無い笑顔が返ってくる。
背を向けて歩き始めたちなつちゃんの髪がふわりと揺れた。

ふと、その姿が振り返る──


ちなつ「大好きですよ、結衣先輩」

さらさらと風にそよぐ髪。



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:01:13.60 ID:s248CH3I0

結衣「……うん、ありがとう」

どこかに消えてしまいそうなそんな姿に、私は言う。

結衣「今度また、一緒に遊ぼう」

ちなつ「絶対ですよ?約束ですからね」

結衣「じゃあ、家まで送るよ」

華奢な手を握りしめ、歩き出す。
振り向けば恥ずかしそうに笑う顔が私を見ていた。


57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:03:40.24 ID:s248CH3I0



──柔らかな笑顔が遠くに見える。
私がいて、みんながいて、そして──


結衣「……ん」

何かとても幸せな夢を見ていたような気がする。
肌を刺すような寒さのはずなのに、どこか暖かい。
そんな自分を可笑しく感じ、苦笑いしながら寝返りをうつ。
目を開くと、あるはずの無い場所に時計が倒れていた。

結衣「っ、京子?ちなつちゃん?」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:05:33.27 ID:s248CH3I0

京子「…はぁはぁ、なんでみんなして寝坊したんだよー」

まだ薄暗い町並みを、三人で駆ける。

ちなつ「京子先輩が…目覚まし蹴飛ばしちゃったから…はぁ…ですよ、もう」

京子「えー私のせい?もー走るの嫌…」

結衣「ほら、文句言わずに走れ、京子」

結衣「あかりが待ってる」

そう言いながら向かう先は、よく四人で登ったあの丘。


60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:07:07.45 ID:s248CH3I0

京子「これは…げほ…アレだよね…」

京子「…ピンチになったら時が止まるってやつ」

結衣「止まるか」

丘に続く階段を駆け登ると、見慣れた景色はうっすらと明るく染まっていた。
白い息を吐きながら、辺りを見渡す。


62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:12:37.76 ID:s248CH3I0

朝靄がかかった丘、その先に立っている懐かしい顔が、こちらに気がついた。
その瞬間、止まった時間が動き出す。



ちなつ「あかり…ちゃん…」

京子「あかり~~~~~~!」




63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 21:13:31.15 ID:s248CH3I0

今年最初の光を浴びた影が、一つになる。
私はこの光景を一生忘れないだろう。

手を取り無邪気に笑い合う面影。
それは私が望んでやまなかった、在りし日の日常そのものだったのだから。




おわり


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 [名無しさん]

ゆいちな…?
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