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千鶴「海が見たい」

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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:03:06.07 ID:bz9E+EG/0

今日もいつものように1人図書館で本を読む。

社交的ではなく友達の少ない私にとっての数少ない娯楽だ。

決して悲観してるわけじゃない。

友達付き合いは面倒だが読書は楽しい。 

他人に比べて想像力が豊かな私は、あらゆる出来事をまるで現実のように妄想できる。

欲は無い、それで充分だ。


何気なく手に取った旅行記では筆者が遠い世界で見た海の美しさに熱弁を奮っている。



千鶴「海か……」


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:04:17.86 ID:bz9E+EG/0

ふと我に返って考えて見ると、自分が1度もこの目で海を見たことが無いのに気付いた。

海だけではない。
そもそも旅行というものをほとんどしたことが無かった。


しかし旅行なんてしたいとは思わない。

夏に姉さんたちが海に行った時も一緒に行こうとは思わなかった。


自分が出しゃばって行っても姉さんと杉浦さんの邪魔になるだけだ。

2人が幸せならそれでいい。

私は家で姉さんの帰りを待ち、「おかえり」を言うのだ。

それが私のシアワセ……




「千鶴~、涎出てるよ~?」


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:05:33.06 ID:bz9E+EG/0

正面から聞こえてきた能天気な声に一気に現実へと引き戻される。

いつの間にか妄想モードに入っていたらしい。

眼鏡をかけ直し涎を拭った後、目の前の腹立たしい顔を睨みつける。



千鶴「チッ、歳納か……何の用だ?」

京子「え~、冷たいな~涎出てるって教えてあげただけじゃ~ん」


間延びした口調にイライラさせられるが、ペースに飲まれないように注意しないと。

何より聞きたいことがもう1つある。


千鶴「いつからそこに居た?」

京子「千鶴がその本を持って椅子に座った時から!」


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:07:12.84 ID:bz9E+EG/0

千鶴「なっ……!」


まったく気付かなかった。

こんな時ばかりは自分の集中力が恨めしくなる。


千鶴「何でお前は黙って正面に座ってたんだよ!」

京子「千鶴が楽しそうに本読んでるのが可愛かったから!」

千鶴「……っ!」


何をさらっと恥ずかしいことを言ってるんだこいつは!



京子「おっ、照れてる千鶴も可愛いよ!ちゅっちゅ~!」



飛び込んできた間抜け面にパンチを叩き込んで押し返す。


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:08:40.42 ID:bz9E+EG/0

京子「ねえ千鶴~?」

千鶴「何だよ」

京子「海に行きたいの?」

千鶴「何でそうなるんだよ」

京子「え~、だってさっき『海か……』って呟いてたじゃん」



思わず顔が赤くなる。

どうやら無意識に声に出してしまっていたようだ。

しかも、よりによってこいつに聞かれていたとは……!


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:10:48.22 ID:bz9E+EG/0

京子「そう言えば夏に皆で海行った時、千鶴は居なかったよね?」

千鶴「だからどうした」

京子「もしかして、寂しかった?」

千鶴「そんなわけないだろ!」

京子「え~本当かな~?」

千鶴「うるさい!」

京子「あんっ」


とりあえず頭に一発、拳骨をお見舞いしてやる。


寂しかった……?私が?

まさか、そんなことありえない。


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:14:01.00 ID:bz9E+EG/0

京子「でもさ、やっぱり気になってるんでしょ?」

千鶴「なんでそうなる」

京子「その本も海洋冒険家の話じゃん」

京子「興味があったから手に取ったんじゃないの?」

千鶴「えっ……」



興味が有った?

無意識に選んだつもりだったが、深層心理ではそうなのか?



……って、何を歳納なんかの戯言に惑わされてるんだ私は!


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:15:15.46 ID:bz9E+EG/0

千鶴「違う、ただ今まで海を直接見たことが無いな、と思っただけだ」

京子「えっ?千鶴海見たこと無いの!?」

千鶴「そうだよ、それがどうした」

京子「何で?ちょっと出かければすぐ見られるのに、もったいないよ!」

千鶴「何がもったいないんだよ」

千鶴「それに、遠出はあまり好きじゃないんだ」

京子「う~ん……」


歳納が珍しく黙って何かを考えている。

できればずっと黙っていて欲しい。


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:16:36.94 ID:bz9E+EG/0

京子「海に行こう!」


千鶴「は?」


突然何を言い出すんだこいつは。



京子「海だよ!海を見に行こう!」

千鶴「行きたきゃ勝手に行ってこい」

京子「違うってば!千鶴も一緒に行くんだよ!」

京子「海見たこと無いんでしょ?だから一緒に見に行けばいいじゃん!」


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:17:34.65 ID:bz9E+EG/0

千鶴「何だその理屈は」


何を考えてるんだ、こいつは。

何でわざわざ歳納なんかと一緒に海に行かなきゃいけないんだよ。



京子「え~?でも海見たいって言ったじゃん」

千鶴「そんなこと言ってない!」

京子「またまた~」

千鶴「いや、本当に言ってないから」

京子「でも見たいとは思ってるんでしょ?」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:19:11.66 ID:bz9E+EG/0

『そんなことない!』と答えようとしたが何故か声が出ない。

『海なんて見たくない』

……本当にそうだろうか?



いや、違う。

きっと私も本当は海が見てみたいのだ。

今までは妄想することだけで満足し、本物を見るということを考えもしなかった。

実際に目の当たりにする海はどんなものなのだろう。

私にもそんな望みが無いわけじゃないし、きっと無意識には思い描いてもいたのだろう。


ただ、それを歳納なんかに気付かされた、という事実が無性に腹立たしいだけなのだ。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:20:33.09 ID:bz9E+EG/0

千鶴「……そうだな」

京子「おっ?やっぱりそうなんじゃん!」

千鶴「海に全く興味が無いわけじゃないってことだよ!」

京子「も~、素直じゃないなあ千鶴は」

千鶴「うるさい!」

京子「正直に『海が見たい』って言えばいいのに」

千鶴「何でわざわざそんなこと言わなくちゃいけないんだよ!」

京子「決意表明だってば」

京子「やりたいことは口に出してはっきり宣言しないと、どんどん先送りになっちゃうよ?」


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:21:37.75 ID:bz9E+EG/0

何でこいつは時々妙に正論を吐くのだろう。

これじゃあまるで私が意地っ張りの駄々っ子みたいじゃないか。



千鶴「チッ……分かったよ、言えばいいんだろ」

千鶴「海が見たい」

千鶴「これで満足か?」



『素直じゃない』だって?その通りだ。

どうして私は本心さえもこんな言い方しかできないのだろう。


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:22:40.52 ID:bz9E+EG/0

京子「よく言った千鶴!」

京子「それじゃあ行こっか」

千鶴「えっ?」



そういうと歳納は私の手を引いて立ちあがった。


千鶴「行くってどこへ?」

京子「どこって、海だよ」

千鶴「今からいくのか!?」

京子「当たり前じゃん!」

京子「『思い立ったが吉日』ってね!」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:23:39.10 ID:bz9E+EG/0

今から海に行くだって?


千鶴「この真冬に何言ってんだ!?」

京子「え~、冬の海ってあんまり見たこと無いし面白そうじゃん!」

京子「もしかして千鶴は泳ぎたかった?」

千鶴「そ、そんなことない!見るだけで充分だ!」

京子「じゃあいつ行っても一緒じゃん」

京子「と、いうわけで、レッツゴー!」



何ということだ……墓穴を掘ってしまうとは……


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:24:43.42 ID:bz9E+EG/0

結局、歳納に強引に引きずられたまま電車に乗り、寒風の吹く冬の海まで来てしまった。

あたりに人影はまったく無く、海岸に立っているのは私たち2人だけだ。


京子「う~、寒い……」


そして私を連れてきた張本人は隣でずっと震えている。


千鶴「当たり前だろ、それぐらい気付け!」

京子「だって、千鶴に早く海を見せてあげたくってさ……」

千鶴「……!」



予想外の返しに言葉が詰まる。


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:26:52.07 ID:bz9E+EG/0

京子「初めて見た海の感想はどう?千鶴」

千鶴「そうだな……」


やはり本物の海は想像以上に雄大で圧倒される。


千鶴「綺麗だ……」


いつも本ばかり読んでいるというのに、こういう時に陳腐な言葉しか出てこないのは何故だろう。

私は言葉を忘れたように、ただ海を眺めていた。



どれぐらいそうしていただろう……

ふと、なんだか左腕が暖かいことに気付いた。

隣を見ると歳納が笑顔で私の顔を覗き込んでいる。

そしていつの間にか両手で私の腕を抱き締めている。


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:27:51.33 ID:bz9E+EG/0

千鶴「何だよ」

京子「いや、千鶴はやっぱり可愛いなと思って」

千鶴「な、何を言い出すんだお前は……!」

京子「えへへ……」

千鶴「何だよ、急に笑い出して気持ち悪いな」

京子「いや~、千鶴ってば私が抱きついても、全然気付かないで海に見惚れてるんだもん」

京子「それが可愛いなと思ってさ」

千鶴「だから……可愛いとか言うのを止めろ!」

京子「ところでさ、千鶴」



京子「殴らないの?」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:29:08.64 ID:bz9E+EG/0

千鶴「……えっ?」

京子「いつもは抱きついたら殴ってくるじゃん」

京子「それなのに、今は殴らないからどうしたのかなと思って」


言われてみればそうだ。

いつもは反射的に手が出ていたのに、今はそれが無い。

というよりも、何故だろう……

いつも感じていたはずの嫌悪感すら無くなってしまっている……?



京子「どうしたの千鶴?顔真っ赤だよ?」


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:30:39.02 ID:bz9E+EG/0

千鶴「こ、これは違う!寒いからだよ!」

千鶴「寒いから腕を掴ませてやってるんだ!」

千鶴「歳納の腕が暖かいから……ってそうじゃなくて!」


駄目だ、何を言っているのだ私は……


京子「おお!ついに千鶴がデレた!」

京子「愛してるよ千鶴~!」

千鶴「デレてない!やめろ!」



そして私は海に着いてから初めて歳納を殴り飛ばした。


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:31:48.22 ID:bz9E+EG/0

千鶴「うっ、寒い……」


急に体が寒く感じる。

歳納が離れたからか?

いや違う、急に風が強くなってきたのだ。

でも何故?



京子「痛たた、千鶴の愛は重いな~」


殴られたというのに嬉しそうに歩いて来る歳納の方から、強い風が吹いている……



千鶴「歳納、お前もしかして私の風除けになってたのか……?」


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:32:59.88 ID:bz9E+EG/0

京子「何のこと?」


すっとぼけた顔で歳納は私の顔を覗き込んでくる。


千鶴「ずっと風上側に立っていただろう」


しかも、体を横向きにして腕に抱きついていたのはきっと自分の作る壁の面積を広くするため……

傍若無人な奴だと思っていたが、ふざけているようで意外なほど人を気遣っている……



京子「やだなあ~、偶然だってば!千鶴は考え過ぎなんだよ~」



そう言った歳納は今日一番の笑顔で笑った。


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:35:06.09 ID:bz9E+EG/0

翌日、案の定歳納は風邪をひいたらしい。

残念そうな姉さんや杉浦さんと別れた後、教室で1人昨日のことを思い出す。


初めて見た広大な海の美しさ……

冬の潮風の冷たさ……



そして今まで毛嫌いしていた歳納の意外な暖かさ……



なんだか顔が熱くなってきた。

もしかすると私も風邪をひいたのかもしれない。

……なんて咄嗟に言い訳を考えている。

素直じゃないのは相変わらずのようだ。


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:36:32.82 ID:bz9E+EG/0

今まで私は外のことなど本を読むだけで、妄想の世界で満足して生きてきた。

本で得た知識と妄想だけで、自分の世界が広がっていたと思いこんでいた。

しかし、その世界に現実はなく血が通ってはいない。

それはまるで草木も生えず、生物の居ない荒涼とした砂漠のようなものだ。

いくら広いと言っても、ただ広い、それだけだ。



歳納はどうだろうか?

常に何かを求め、それに自分の足で向かう行動力。

それも自分1人だけではなく、歳納の周りには常に人が居る。

多くの人を惹き付ける歳納の持つ世界は、まさに海のように広大で美しいのだろう。


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:37:39.12 ID:bz9E+EG/0

『愛してるよ千鶴~!』



千鶴「愛……か……」


私にとってそれは姉さんだけに与え、姉さんだけから与えられるもの。

しかし、歳納の言うそれはまた違う感じがする……

私が昨日から歳納に感じている気持ちは何だろう……?


もしも……もしも、仮にこれが愛だと言われたとしても、不思議と悪い気はしない。

姉さんだけじゃなく、もっと人を愛したいと思う。


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/02/08(金) 23:39:11.72 ID:bz9E+EG/0

学校が終わったら歳納の見舞いに行ってやろうか、などと柄にもないことを考える。

9割以上は歳納の自業自得だと思うが、私の身代わりになってくれたわけだしな。

私が見舞いに来たと知ったら歳納はどんな顔をするだろう。

想像してみると、不思議と口元が緩んできた。


歳納と一緒に居ると、やっぱり疲れることが多いだろう。

でも、その疲労感にも私の砂漠のような世界には無かった、生きているという暖かさを感じる。

歳納が元気になったら、また一緒にどこかへ出かけてみるのもいいかもしれない。

あいつの目に映る美しい世界、愛と海のあるところへ。




おわり


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■コメント

 [名無しさん]

京ちづいいね

 [名無しさん]

俺も素直に喜べないよ
だから気にしちゃだめだよ
乙!

 [名無しさん]

京子ちゃんたら千鶴キラーなんだから

 [名無しさん]

属性的に元気×孤独はすごく好きだ

 [にこにこ]

京鶴好きだ~

 [名無もり]

ちづる~
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