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ちなつ「なんだか私たち、家族みたいですね」

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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 19:57:57.07 ID:629YTV0W0

なんだか体調が悪い。

土日明けの体育で疲れただけ、
と思っていたもののどうやら違ったらしい。


今日の部活はやめとこうかな…
せっかくの月曜日に結衣先輩と会えないのは寂しいけど…

そう思いながら窓の外に目をやる。放課後の教室。
きれいな青空と白い雲がどこか煩わしく思えて、
ふぅとため息をつく。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:02:59.45 ID:629YTV0W0

あかり「ちなつちゃん?」

ふと声がして振り向く。
あかりちゃんのいつもの笑顔が
心なしか心配そうに、こっちを見ていた。

ちなつ「…あ、ごめん、ぼうっとしてた」

あかり「大丈夫?ちなつちゃん、疲れてそうだけど…」

ちなつ「ううん。大丈夫」


そんなに体調が悪いわけでもなさそうなので
変に心配させるのも、と思って返事をする。


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:08:00.26 ID:629YTV0W0

あかり「そっか、よかったぁ~」

あかり「前みたいに無理してるのかなって」

その言葉にちょっぴりドキッとなった。
大丈夫と言った手前、体調が悪いとは言いづらい。

あかり「でね、部活なんだけど」

あかり「あかり、プリント出してくるから先に部室行っててねって言おうと思って」

ちなつ「…うん」

どう切り出そうかと迷っているうちに
あかりちゃんは背を向けて歩き出す。


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:13:00.18 ID:629YTV0W0

あかり「あ、それから…」

と言って振り向くあかりちゃん。
「あのね、今日の部活…」と喉まで出かかった言葉が力なくこぼれる。


あかり「昼休みに京子ちゃんに会ったんだけど」

あかり「今日のミラクるんの映画すごく楽しみにしてたよぉ~」

うぅ、そういえば。
今日は部室でミラクるんの映画をみんなで観るんだっけ。
先週、京子先輩が嬉しそうに言っていたことを思い出す。


あかり「それじゃ、先に部室行っててね、ちなつちゃん」

そう言うと、あかりちゃんの姿は扉の向こうに行ってしまった。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:18:03.30 ID:629YTV0W0

どうしようもなくなって机につっぷする。
余計に頭が痛くなった気がした。

向日葵「…吉川さん?大丈夫ですの?」

ちなつ「あ、向日葵ちゃん…」

ゆっくり顔を上げると
心配そうな向日葵ちゃんの顔が見えた。


ちなつ「実はね…ちょっと体調が悪いみたい」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:23:00.63 ID:629YTV0W0
 
向日葵「…顔色はそんなに悪くなさそうですけど」

よかった。
それなら部活出ても大丈夫かも。

向日葵「でもあんまり無理しない方がいいですわよ」

向日葵「吉川さん、前にも無理してたって赤座さんから聞きましたわ」

ちなつ「あかりちゃんが…?」

そっか、みんな心配してくれてたんだ。
『風邪の時はちゃんと休まなきゃ駄目だよ』
頭によぎる結衣先輩の言葉。

間違っても結衣先輩の前で倒れるわけにはいかないし、
京子先輩には悪いけど…やっぱり部活は休んだ方が良いかもしれない。

そう思っていると遠くから聞こえる元気な声。


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:28:00.38 ID:629YTV0W0

櫻子「あー!向日葵ー!」

櫻子「探してたんだぞ!どこ行ってたんだよ、まったく」

向日葵「うるさいですわ、櫻子」

向日葵「先生に宿題のプリント出しに行ってただけですのに」

きっと京子先輩は今頃はりきって準備しているんだろう。
不思議と目の前の櫻子ちゃんが京子先輩と重なる。

櫻子「あ、そうだ、ちなつちゃん」

櫻子「さっき生徒会室で歳納先輩に伝言を頼まれて」

櫻子「『早く部室来てね、待ってるよちなちゅ~』だってー」


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:33:00.72 ID:629YTV0W0
 
 
ちなつ「もう、京子先輩…」

ちなつ「人の気も知らないで…」


二人が帰った後の誰もいない教室で、一人呟く。
本格的に熱でもでてきたのか、
居るはずのない結衣先輩が扉の間に見えた気がした。

ちなつ「結衣先輩…私どうすれば…」



結衣「あれ、やっぱりちなつちゃんまだ教室に居たんだ」

ちなつ「…って、ゆ、結衣先輩!?」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:38:00.91 ID:629YTV0W0

結衣「京子が二人が来ないってうるさくて」

結衣「それで、あかりは…」

ちなつ「あ、あかりちゃんなら提出物を渡しに…」

結衣先輩がちらとあかりちゃんの置きっぱなしの鞄を見る。


結衣「…そっか、じゃあ待ってよっか」

結衣「……でもあんまり京子を一人にしたくないな」

ちなつ「えっ…?」

結衣「あ、いや…実は今日パン焼いてきたんだけど」

結衣「ほら、前に京子が全部食べちゃって」

結衣「ちなつちゃんたち食べられなかったって聞いたから」

ちなつ「結衣先輩…」

見上げる結衣先輩の優しい笑顔。


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:43:00.79 ID:629YTV0W0
 
あかり「あれっ、結衣ちゃん?」

あかり「…と、ちなつちゃん!?ごめんね、待っててくれたの?」


結衣「あ、来た来た」

結衣「それじゃ、あかり、ちなつちゃん、急ごう」

そう言って結衣先輩は走り出す。

もちろんです。結衣先輩。
立ち上がって結衣先輩を追いかける。
前を走るその背が、いつもより大きく見えた。


あかり「えっ、二人とも待ってよ~」


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:48:20.14 ID:629YTV0W0
 
 
京子「待ってたよ、ちなちゅ~」

ちなつ「ちょ、やめてください」

部室につくといつもの京子先輩。
今日ばかりはなんだかそれで安心する。

ちなつ「それより京子先輩、結衣先輩のパン食べてないですよね」

結衣「うん、ちゃんとあるよ、ちなつちゃん」

京子「そんなー、全部食べるわけないのに」

結衣「どの口が言う」


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:53:02.05 ID:629YTV0W0

京子「まあまあ、それよりちなつちゃんも来たことだし…」

京子「じゃじゃーん!新作BD&DVD!」

そう言って京子先輩は嬉しそうに立ち上がる。

ちなつ「なんでわざわざ2つも…」

京子「いやー、映画館で見たんだけど」

京子「良かったんだよこれが、ほんとに、うん」

京子「今回のテーマはずばり『家族』!」

ちなつ「はぁ…『家族』ですか?」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 20:58:05.79 ID:629YTV0W0

京子「…突如地球に襲い掛かる宇宙人集団」

京子「その名もギンガギンガ団!」

京子「圧倒的な力にミラクるんも及ばず絶体絶命のピンチ!」

京子「そこに颯爽と現れる我らがギガギガ団!」

京子「傷ついたミラクるんが絞り出す『ライカちゃん、どうして…』に」

京子「『私たちはこの地球に住む“家族”だからっ──』」

京子「いやー、感動、感動」

京子「…って、あれ、これってネタバレ?」

結衣「おい」


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:03:01.75 ID:629YTV0W0

忘れてくれ、と言いつつ準備を始める京子先輩の隣で
結衣先輩があきれたように微笑む。
そんな結衣先輩の横顔を見ているだけで、
心も体も温まっていく様な気がする。


もし結衣先輩と家族になれたら…
きっと毎日が楽しくてしょうがなくて
目が覚めた時から、朝も昼も、そして夜も…
ずっと結衣先輩と一緒。

そう、ずっと一緒に──
 
 

23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:08:24.34 ID:629YTV0W0
 
結衣「ちなつちゃん?」

その声ではっとする。

ちなつ「…あっ、結衣先輩、私」

結衣先輩の後ろにはリモコンを持ったままの京子先輩、
どうやら一瞬寝てしまったらしい。

京子「ひょっとして、ちなつちゃん…」

京子「ミラクるん嫌いに…うっ…」


結衣「…ちなつちゃん、大丈夫?」

結衣先輩の声が近づく。
ここまできて気付かれるわけにはいかない。


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:13:14.01 ID:629YTV0W0

ちなつ「もちろん、大丈夫ですよ」

ちなつ「ちょっと、体育で疲れただけですから」

結衣「うん、それならいいけど…」


とにかくこの場をどうにかしないと、

ちなつ「そうだ、私、紅茶入れてきますからっ」

えいやっと立ち上がって言う。
その瞬間、目の前の景色がぐるりと回った。

「ちなつちゃん!?」

どこか遠くで、私を呼ぶ声が聞こえた気がした。
  
 

25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:18:03.78 ID:629YTV0W0

──



体が、ふわふわする。
それに甘い匂い。

…どこか懐かしいこの感覚。
そういえば小さいころ、
お姉ちゃんによくおんぶしてもらったっけ。

これは…夢?
ぼんやりと揺れる黒い髪。

そっか、私、
夢を見ているのかな。


ちなつ「…結衣先輩」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:23:01.77 ID:629YTV0W0

ちなつ「……痛っ」

鈍い痛みで目が覚める。
顔を上げると、帰り慣れた道の風景が流れていく。

結衣「あ、ちなつちゃん」

結衣「ごめんね、起こしちゃった?」

結衣先輩の声が耳元ではっきりと響いた。


あかり「ちなつちゃん、大丈夫?」

声が聞こえて後ろを見ると
そこにはあかりちゃん…と京子先輩の姿があった。

ちなつ「…うん、大丈夫」

本当に心配そうな顔のあかりちゃん。
その横の京子先輩はいつもと違って妙に静かだ。


ちなつ「京子先輩、私…」


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:28:01.08 ID:629YTV0W0
 
京子「ごめん!ちなつちゃん」

突然、手を合わせて頭を下げる京子先輩。


思いもかけない行動に困惑したのもつかの間、
結衣先輩がちょっぴりあきれたような笑顔で振り向いた。

結衣「…京子、ちなつちゃんが倒れたとき」

結衣「真っ先に『私がちなつちゃんを助ける』ってちなつちゃん抱えたはいいんだけど」

結衣「慌ててたからそのあと転んで…」

京子「あーそれ以上言うなよ、もー」

恥ずかしそうに横を向く京子先輩の隣であかりちゃんが笑う。


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:33:23.63 ID:629YTV0W0

あかり「それはそうと、ちなつちゃん、やっぱり無理してたの?」

ちなつ「あ…、うん…」

ちなつ「ごめんね、ちょっと言い出せなくて──」

あ、そうだった。
そこまで言って思い出す。


ちなつ「そもそも京子先輩が今日──」



京子「…え?」

ちなつ「……」

京子「……あ」


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:38:01.16 ID:629YTV0W0

京子「ち、ちなちゅ~」

いつものようにこっちに向かってくる京子先輩。

「こら、京子」と言いつつ結衣先輩が京子先輩の方を向く。
京子先輩は不満げに顔を膨らませる。

京子「結衣~、私のちなつちゃんとらないでよー」

京子「ほら、私ら家族だろ~」


結衣「うん家族…って、え?」

京子「そう、ミラクるんのように…って、あー!」

誇らしげな顔をしていた京子先輩が突然大声をあげた。

京子「そういえば、無理言って生徒会から借りた機材、置いたままだった」

京子「それに、DVDも…」

ちょっと取ってくると言って、京子先輩は走り出す。

あかり「あっ、京子ちゃん、あかりも手伝うよぉ」
 
 

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:43:06.39 ID:629YTV0W0
 
 
ちなつ「二人とも、行っちゃいましたね…」

二人きりになった帰り道で呟く。

静まりかえった帰り道は夕暮れのせいもあるのか、
どことなく寂しくて、ただ結衣先輩の首に回された手を握りしめた。


結衣「ごめんね、ちなつちゃん」

ぽつり、結衣先輩が言った。
慌ててそれに答える。

ちなつ「そんなっ、結衣先輩があやまらなくても」

ちなつ「私が勝手に……」


ちなつ「…あ、ごめん…なさい」

そっか、私、勝手に無理して迷惑かけてたのかな。
変に思いがこみ上げてくる。


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:48:06.22 ID:629YTV0W0

結衣「っと、ごめんごめん、そういう意味じゃなくて」

ちなつ「…え?」

結衣「いや、うん、私がちなつちゃんのこと」

結衣「ちゃんと分かってあげられなかったから」

ちなつ「結衣先輩…」

ゆっくりと前を向く結衣先輩。
やっぱり結衣先輩は優しい、そう思った。


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:53:06.85 ID:629YTV0W0

ちなつ「そういえば結局、結衣先輩のパン食べられませんでした」

結衣「ちなつちゃんが食べたいなら、また焼いてあげるよ」

結衣「どうせまた京子が、みんなで映画見ようって言い出すだろうし」

ちなつ「ふふっ、そうですね」

ちなつ「あれ…これって」

映画を見て、
手作りの料理を食べて、
そして、時には支えてくれる。


ちなつ「…別に京子先輩じゃないですけど」

ちなつ「なんだか私たち、家族みたいですね」
 
 

35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 21:58:06.62 ID:629YTV0W0
 
結衣「…うん、そうだね」

結衣先輩の髪が私の頬をくすぐる。
目を閉じれば、これがまるで夢みたいに思えて、
でも不思議と安心できる、そんな気持ちがした。


結衣「だから、ちなつちゃん」

ちなつ「…結衣先輩?」

結衣「もう少し、頼ってくれてもいいからね」

ちなつ「……はい」



体が、暖かい。
まるで本当の夢みたいに。



──大好きです、結衣先輩。


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 22:00:26.76 ID:629YTV0W0



あかり「ちなつちゃん、おはようっ」

ちなつ「おはよう、あかりちゃん」

朝の日差しをうけた通学路に、
いつものように明るいあかりちゃん。

あかり「もう大丈夫なの?ちなつちゃん」

あかり「ちなつちゃんだったら、何でも相談にのるからね」

ちなつ「うん、ありがと、あかりちゃん」

嘘をつけなさそうなほど眩しい、あかりちゃんの笑顔。
その笑顔が、何かに気づいて前を向く。


あかり「あっ、結衣ちゃん、京子ちゃん」


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/28(金) 22:01:14.32 ID:629YTV0W0
 
遠くに見える、その姿。
それを見るだけで、なんだか勇気が湧いてくる。


だから、今日も元気に。



ちなつ「結衣せんぱーいっ」





おわり


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