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向日葵「大晦日と櫻子と私」

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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 21:56:30.73 ID:fEBNlCp50

「はぁ……」

さっきからずっとこうしているのに、いまだに声が漏れる。

「向日葵……おばちゃんみたい。  ……はふぅ……」

「櫻子、あなたも出てますわよそれ」

「えぇぇ……別にいいじゃんか……」

随分と長いこと動いていない気がする。

それも仕方ない。
コレには、それだけの魔力がある。

人を惹きつけてやまない魔法の存在。
引き込んだ人を捕まえて離さない魔性の存在。


コタツ。


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 21:57:22.27 ID:fEBNlCp50

そのこらえがたい魅力にまんまと捕らわれて、
私古谷向日葵と大室櫻子は、こうしてぬくい時間を際限なく楽しんでいる。

場所は、隣人である櫻子の家。
向かい合わせに過ごす時間。

「櫻子……あなた今年のうちにやっておくこととかありませんのぉ……」

「んー、だいじょーぶ……」

「大掃除とか……」

「こないだやったぁ……」

自然と声すらも間延びしてしまう。
時は年の瀬。今年が暮れていく最中。

大晦日である。



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 21:58:32.51 ID:fEBNlCp50

とてとて。

がちゃ。

ごきゅごきゅ。

「あー花子ぉ……ミカン、とってぇ……」

部屋に入ってきて、冷蔵庫から取り出した牛乳を飲んでいる妹にそう声をかける櫻子。

「えー、なんで花子がとらなきゃいけないし」

姉の頼みに遠慮もなく難色を示すこの子は、櫻子の妹、三女の花子ちゃん。
簡単なお願いでさえぱっと断るところに、この姉妹の関係性がみえる気がする。

「いいじゃん……どうせまた部屋もどんでしょー……その途中じゃん……」
「櫻子がコタツから出たほうが早い……」

「なんか言ったぁ?」
「なんでもないし。 ……ひま子お姉ちゃんも、ミカン、食べる?」
「へ? あ、あぁ、いただけるのであれば、嬉しいですけど……」

「じゃあ……仕方ない、ひま子お姉ちゃんにとってあげるついでに……し・か・た・な・い・か・ら! 櫻子のも持っていくし」


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 21:59:58.65 ID:fEBNlCp50

幼馴染に似て、この子も素直じゃないところがあるみたい。
血筋かな。
もっと素直になったらもっともっと可愛くなれるだろうに、もったいない。

なんだよそれ……私がついでかよ。そうつぶやく櫻子を横目に、ミカンを受け取る。
ありがとう。やっぱりコタツにはミカンですわね。

ちゃっかり自分用のミカンも片手に部屋を出ようとする花子ちゃんに、お礼を告げる。

「そういえば……」

気にしないでとの返事の後に花子ちゃんが続ける。


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:01:44.07 ID:fEBNlCp50

「どうしましたの?」
「櫻子の大掃除、花子と撫子お姉ちゃんも手伝わされて大変だったし……」
「なっ!? は、花子!?」

「それに、思い出がいっぱーいとかいって中々片付かなかったし!」
「~~~~~~!!」
「ちょっと櫻子、ばたばた暴れないで!」

「それじゃ、ごゆっくりだし~」

語尾に音符でもついていそうなセリフを残し、軽やかな足取りで去っていく。

しばらく櫻子のバタバタは続いていたが、ぶつける相手がいないことに気付いたためか、
単にコタツに癒されたためか。
次第に落ち着きを取り戻していく。
……いったい、大掃除のときになにがあったのかしら。


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:03:30.53 ID:fEBNlCp50

そういえばバカ娘の大掃除のもうひとりの協力者……被害者。
大室三姉妹長女の撫子さんの姿が見えないような。


大掃除。
撫子さん。


この二つの言葉が結びついて、頭に思い出したくない光景が浮かんだ気がして、すぐこの話を終わらせることにする。


頭を振って視界を正面に戻した先には、甘くなーれ、甘くなーれとおまじないをかけつつミカンを揉み込む小娘がいた。

そうだ、ミカン……いただこう。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:05:38.70 ID:fEBNlCp50

もくもくと皮をむく。
ミカンのおしりに指をぷつっと入れ、なるべく剥いた皮が全部つながるように集中する。
なんとなくだけど、むきむき。

無事これが、ちっちゃな挑戦が達成できたら、来年もきっといい年。

私の運命は、今この手の中の一枚皮に託された。 ……ってなんでですか。


ふと視界に白いものが映る。
糸くず? 
……と思っていたら、また増えた?
テーブルの上。
コタツの天板の上。

はてなんだろうと、その世界の半分ほど版図を広げた黄色い地図から目を離して、顔を上げる。

またも飛んできた。
目の前から。

……目の前にはミカンの皮を剥き終わり、白い筋を取り除いている櫻子がいた。


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:07:51.59 ID:fEBNlCp50


「……なにしてますの」
「ミカン食べてる」

「まだ食べてませんわ」
「もうすぐ食べる。 ……この筋、気になるところ取り終わったら」

「そうですわね」
「そうだよ」

「ではなんで取り終わった筋をこっちに投げてきますの?」
「ん? なんとなく」

ぽいっ。

「……なんでこうして喋っている最中も続けますの?」
「ん? まぁね」

「わけわかりませんわ……しょっと」
「ん、すまんね」



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:09:50.51 ID:fEBNlCp50

まったく、その態度のどこがすまないと思っているというのか。
コタツの脇からティッシュを一枚とり、正面に掛ける櫻子との間に広げる。
櫻子が撒き散らした白い筋と、同じく十数枚の外皮をまとめる。
さて、続き続き。


―――のんびり会話。


互いに食べ終わったミカンの残骸を脇に避け、ぐだっと一息。

売り言葉に買い言葉をしても、いつもと違ってヒートアップしない。
あったとしても、口論とは言いがたい、嫌味や皮肉に少し毛が生えた程度。
お互いコタツの天板にあごを乗せ、両手両足をあたためながらであれば、少しくらい変なことを言われても心が寛容になるようだ。


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:12:26.81 ID:fEBNlCp50

広い心って、いいな。
思って足を伸ばす……。

んっ、ん~~~…………ごつっ。

「……ちょっと、足、当たったんだけど」
「あら、ごめんあそばせですわ」

「いやコタツんなかで足を遊ばせんなよ!」
「……心が狭いですわね、コタツ……も広くはありませんけれど、この日本文化の叡智のように何でも受け入れられるようになりなさい?」

「なに言ってるかわっかんねーよ! バッカじゃねーの!?」
「バカは理解ができない櫻子の方ですわ……」

「はぁ!? 変なことを言うほうがバカですー。それがわからなくてもいたって正常ですー」

むか。
いらいら。

まったくこの娘は人を怒らせる天才かしら。
そんなところで才能を発揮する必要ないのに!
もっと勉強が必要ですわ勉強が!


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:14:47.46 ID:fEBNlCp50

「……このバカ娘」
「はぁ!? なに向日葵は自分が頭いいとでも思ってんの!? だったら歳納先輩みたいにテストで学年一位でもとってみろよ!」

「なんでそこで急に歳納先輩が出てくるんですの。それじゃあ自分がバカだって認めたみたいですわよ? それに私はあなたに勉強を教えられるくらいには」
「うるせーうるせーうるせー!!」

ガタッと。 バンッ、と。 そして、ゴチッ。
そんな音を響かせて櫻子が勢いよく立ち上がる。
立ち上がる際に天板を両手で叩くものだから、てこの原理で向かい側が持ち上がったそれが、少し浮かせていた私のあごを打つ。

「いたっ! なにするんですの! それにあなたのほうがよっぽどうるさいですわ!!」

こちらも負けじと立ち上がる。
テーブルを突いても既に立ち上がった相手には届かないから、何もせずに。


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:17:49.34 ID:fEBNlCp50

「なんだよ向日葵は! ……」

「だいたい櫻子はいつも! ……」

「……」

「……」

どちらともなくすっとコタツの中に戻る。

「寒い……」

「……あぁ、あったかいですわ」

コタツの外と、コタツの中の違い。
襲いくる寒さにすっかり気を削がれてしまった。

口論の機を失ったまま、足を伸ばす。


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:19:42.30 ID:fEBNlCp50

「だから当たってるって……」

「じゃあ私が少し左に寄りますから、逆に行きなさいな」

ぶーぶーと文句をたれつつ、櫻子が少し横へ。
私も少し動く。こうしてふたりともが譲り合えば、お互いにぶつかることはない。

「こうすれば櫻子も足を伸ばせるでしょう?」

「真ん中のほうがあったかいんだけどな……」

まだ少しぶつぶつ言っている。

でもこうすれば、お互い触れることはない。


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:22:03.53 ID:fEBNlCp50



   わたくしたち、いつもこうですわね。
   ……そだね、今年一年もそうだった。
   
   ……来年も、こうなるのかしらね。
   ……先のことはわかんないよ。
   
   そうですわよね、まぁ生徒会副会長になるのはわたくしですが。
   はぁ? なにいっちゃってんのー? 向日葵には負けないし。
   
   ふふ、副会長の漢字を間違えるような子には負けませんわ。
   は!? わ、私がいつ間違えたし!
   
   以前……福笑いとか、福めくりとかの福になってましたわ。
   な、なんだとー……!?
   
   そうですわね、櫻子は正月限定の福を招く会長でもやるのがお似合いですわね。
   なんだよそれー……。
   
   ……福袋でも作ったら?
   よくわかんねーし……ねぇ、




20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/31(土) 22:23:55.86 ID:fEBNlCp50

「ちょっと真ん中よってもいい?」
「……わたくしも寄りますわよ」

「いいよ」

よいしょ。
互いの足が、触れるか触れないかの距離まで近づいた。

年が暮れていくなか、何も言わず、ふたり。

多分来年もこの先もずっとこんな感じなのかしらね。
来年の話をすると鬼が笑うというが構わない。

この子と、ずっと二人なら。


ねぇ櫻子。 ……来年も、よろしくですわ。

ん。よろしく。 ……向日葵。


ここからじゃ見えないけれど櫻子の足が、触れている。

やっぱりコタツって、あたたかい。




――完――


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