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なでかの短編

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869:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:41:26.95 ID:x/WswkH+0

私は撫子さんの彼女である。名前はまだない(メタ的な意味で)。
氏素性はおよそ平凡そのもの。心身ともに特記事項なし。
かろうじて人様より豊かな胸も、自慢するほどたいそうなものじゃない。
そんな私と撫子さんは同学年で、18歳で、受験生だ。

これは、受験勉強に行き詰まった私が、散歩という名の現実逃避をした時の話。
足が自然と撫子さんの家に向かってしまい、指が自然とチャイムを押してしまった時の話だ。


870:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:42:31.54 ID:x/WswkH+0

ぴんぽーん。……。がちゃり。
「はい、どちッ」
「!?」
出会い頭に両者フリーズ。
撫子さんは、きっと予期せぬ(最愛の)来訪者に驚いたのだろう。
一方で私が何故フリーズしたのかと言えば、原因は撫子さんの顔にあった。
いや、「うわっ……私の彼女、美人すぎ……?」的なおノロケじゃなくて。美人だけどね。
普段の撫子さんの飾らない美貌に、彩りを加える要素があったのだ。
それは何か。端的に言えば、

「………………眼鏡?」

を、掛けていた。


871:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:43:14.89 ID:x/WswkH+0

「っ!」
その時、突如として撫子さんが膝から床へくずおれた。
撫子さんお得意の土下座か――いや、違う。
これは土下座じゃない。
撫子さんはこんな不格好な土下座なんてしない。
これは、言うなれば亀。外敵から身を守る亀の構えだった。
何故このタイミングで撫子さんが亀と化したのか、それは謎だれど。

「……………………………………………………なんでここにいるの」

消え入りそうな声で撫子さんが言った。
「えー、っと……勉強の気晴らしに、散歩?」
「……受験生のくせに……」
「ぐう!」
正論すぎてぐうの音しか出ない。
「とにかく今日は帰って……お願いだから」
それだけを告げると、撫子さんは亀を維持したまま廊下を引き返し、階段を昇っていった。
うーん、アクロバティックな撫子さんも素敵だなぁ。
「……さて」
なんて考えてばかりもいられない。
何事かとリビングから顔を覗かせる妹さん達に新年の挨拶を済ませ、私も二階へと足を運んだ。


872:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:44:20.38 ID:x/WswkH+0

「なでしこさーん……って」
撫子さんの部屋を訪れた私を待ち受けていたのは、ベッドの上に鎮座まします布団の塊だった。
近づいて耳をそばだてると、中からぶつぶつと何か聞こえてくる。

「……見られた……最悪……おっぱい……ありえない……どうしてこんな時に……油断した……おっぱい……」

「…………」
怖いよ!
現実と恋人から眼を逸らすように部屋の中を見渡す。
今までにも何度か入ったことのある、撫子さんの部屋。
机の上には、開いたままのノートや参考書が広がっていて、
「お」
その上に無造作に放られていた「ソレ」を手に取る。
深いブルーの、ハーフリムの眼鏡。
「どれどれ」
すちゃっ、と試しに掛けてみたり。
「ぅあ……っ」
クラッとして、フラッとした。
そのまま背中からベッドへ倒れ込む。敢えてわざとらしく。
「ひー、度キツいねー」
「……もう、なにやってんだか」
私の三文芝居をきっかけに、ようやく撫子さんが私へ言葉を宛ててくれた。


873:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:45:24.49 ID:x/WswkH+0

「ふへへ、ごめんなさい」
「……」
もぞもぞと、布団がうごめく。
顔を出す様子はないから、中で体勢を変えているだけらしい。
「ねえ」
くぐもった声。
「ん、なぁに撫子さん?」
「話が、あるんだけど。聞いてくれる?」
「断る理由なんてないよ」
「……そう」
別に大した話じゃないんだけど。
そう前置きして、撫子さんはゆっくりと喋り始めた。

小学生の頃から眼鏡を掛けていたということ。
クラスの意地悪な子にそれをからかわれたということ。
それが軽いコンプレックスになっているということ。
だから中学校に上がる前にコンタクトに変えたということ。
小学校からの友人達はそれを知っているということ。

私にだけは、知られたくなかったということ。


874:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:46:09.87 ID:x/WswkH+0

「……」
「……」
やがて沈黙が訪れた。
遡った過去から、ひとつひとつ順を追って私に秘密を打ち明けてくれた撫子さん。
考えてみれば、撫子さんの自分語りを聞くのははじめてのことだった。
長いようで短いような静寂が去り、彼女は最後にこう締めくくる。

「……きらいになったでしょ?」

なにか、とても大切ななにかを諦めたような、平坦な声音だった。
だから私は――

「ならないよ?」

間髪入れずにそう返した。


875:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:46:52.47 ID:x/WswkH+0

「だよね、それが普つ……えっ?」
「え?」
「……えっ? ならないの?」
「ならないよー」
「なッ……どうして? 私、隠し事してたんだよ?」
「ミステリアスな撫子さんも好きー」
「そ、それはどうも……って! そうじゃなくて――」
「いいんじゃない?」
「――え?」
「年頃の女の子だもん。秘密のひとつやふたつ、気にしてたらキリがないよ」
「……」
「第一、私の方こそ撫子さんにナイショで……ふへへへへ」
「ちょっとなに隠してるの」
「だから、ひ・み・つ♪」


876:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:47:46.61 ID:x/WswkH+0

「――」
あ、呆れてる。布団の中の撫子さん、絶対に呆れてる。
深刻そうな雰囲気はすっかり霧散してしまった。
頃合いかな、と思う。
「とにかくさ。私は気にしてないから、撫子さんも気負いすぎちゃダメだよ?」
「………………でも……」
くぐもった声で口ごもる撫子さん。
「もー頑固だなぁ。じゃあ証明してあげるから、ね?」
「証明?」
「うん。顔出してー」
「…………」
ためらいを感じさせる間。ややもして、再びうごめく布団。
もぞもぞ、すぽん。
「っ……ふぅ――」
そして、久しぶりにお目見えした撫子さんフェイスに、
「えいっ☆」

すちゃっ。

すかさず眼鏡を装着させる私だった。


877:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:48:11.71 ID:x/WswkH+0

「………………、は?」
自分が何をされたか理解できない様子の撫子さん。
眼鏡っ子へと変貌を遂げた彼女を見て、私は噛みしめるように一言。

「うん、やっぱり可愛い」

「は?」
自分が何を言われたか理解できない様子――ではないようだ。
その証拠に、撫子さんの顔が見る見る内に紅潮していく。
やがて耳たぶまでもが赤くなった頃、慌てて撫子さんが言う。
「か、可愛くなんて……ない」
「可愛いってば」
「うそ」
「可愛すぎて地球がヤバい」
「やだ、ちがうっ、うそうそうそ」
「可愛いってばもー!!」
「きゃっ!?」
辛抱たまらず撫子さんを押し倒した。
ていうか聞きました奥さん? 「きゃっ」ですって「きゃっ」。ふへへ。


878:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:49:02.59 ID:x/WswkH+0

さて、気持ちを切り換えて。
ベッドの上の、私の下の、最愛の人へ視線を定める。
「あのね、撫子さん」
声は、努めて優しく。
眼鏡の向こうに見えるその瞳が、とても不安げに潤んでいたから。
「私、隠し事はしても、撫子さんに嘘なんてつかないよ?」
「っ……」
ぎしり、聞こえた軋みは、どこから漏れた音だろう。
「私は撫子さんが好き。可愛い撫子さんが大好き」
もっと近くに。
そう言われたような気がして、唇を寄せる。
「眼鏡な撫子さんもすっごく可愛い。だからやっぱり、私は撫子さんが大好き」
だから、
「泣かないで撫子さん」
私は、
「きらいになんてならないから」
あなたに、
「証明、してあげる」

そっと、くちづけを――



がちゃり。
「ねーちゃーん。お茶持ってきた……ヨッ!?」


879:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:50:07.97 ID:x/WswkH+0

「櫻子? 入り口で立ち止まってたら迷惑だ……シッ!?」
――する、直前に。
なんの前触れもなく扉を開けたのは、撫子さんの妹さん達だった。
上の妹さんはドアノブを握ったまま硬直。
下の妹さんもその後ろで目をまんまるにしている。
「あ、あっれぇー……もしかして、私たち、お邪魔だった……?」
恐る恐る、上の妹さんが訪ねる。
苦笑しか出来ない私を押し退けて、撫子さんが身を起こす。
そして絶対零度の瞳で家族を見据え、

「櫻子……花子……人が来てる時は部屋に入るなって、いつも言ってるよね……?」

流石の迫力だった。
「ひッ!? だ、だから私はやめようって言ったじゃん花子ー!」
「うううウソつくなし! 言い出しっぺは櫻子だし!!」
恐怖に抱き合いながらも責任逃れに必死な妹さん達。
撫子さんは静かに立ち上がり、幽鬼の歩みで二人に迫る。
ああ、せっかくいいムードだったのに……と、嘆く私にひとつの閃き。
即実行に移すべく、ベッドを降り撫子さんの肩を、ちょいちょい。
「なーでしこさんっ」
「ちょっと、今取り込みちゅう――」
ちゅう。


880:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:50:46.85 ID:x/WswkH+0

「!?」
「!!?」
「!?!?!!??!?!!!」
「~♪」
ちゅう堪能ちゅう。
思えば新年初ちゅう、いつもより情熱的に貪ってしまうのも仕方ない。
やがて脱力しきった撫子さんが私にもたれ掛かる。息も絶え絶えだ。
その背中をしっかりと抱き留め、今一度ベッドへきびすを返す。
「あ」
思い出したように首だけで後ろを見遣る。
上の妹さんが、愕然としながらも下の妹さんの目を塞いでいた。
いいお姉ちゃんだな、と思いながら、私は彼女に笑いかける。

「ごめんね、毎度お騒がせしてます」

妹さん達が逃げるように部屋を出たのを確認して、私は撫子さんごとベッドへ飛び込んだ。


881:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:51:22.54 ID:x/WswkH+0

私は撫子さんの彼女である。名前はまだない(メタ的な意味で)。
氏素性はおよそ平凡そのもの。心身ともに特記事項なし。
かろうじて人様より豊かな胸も、自慢するほどたいそうなものじゃない。
そんな私と撫子さんは同学年で、18歳で、受験生で、そして――

「じゃーん! 見て見て撫子さん、似合う!?」
「………………どうしたのそれ」
「作っちゃった。どうかな、変じゃない?」
「……ま、悪くないかな」
「ふへへ、ありがとー」


882:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:52:44.50 ID:x/WswkH+0

「ていうか、あんた視力いくつだっけ」
「え? 両目とも1.5だけど」
「…………ダテ?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど……なんだかなぁ」
「まあまあ撫子さん、細かいことは言いっこなしだよー」
「はぁ……」
「ささ、早くいこ? 電車おくれちゃう」
「待った。その前に」
「え――」
「――」


私達はキスをした。
フレーム同士のぶつかる硬い音さえ、とても愛おしかった。

 

883:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/21(土) 00:54:07.71 ID:x/WswkH+0

            , :.:.:.-:.:.:.....、
         ,..ィ'~:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
        /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.                    
      ィ'´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
.     ,イ.:.:.r',ニ、、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
    ム-宀― 、、ミ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ
.   〃, '     ヾ!:.:.:./ヘイトイilllll
   f      ヽヽ .!/´   |llllllllllllll
   i f .i  , 、 l.ハ .|ヽ,   .l、`~;ィ''"    ┼ヽ  -|r‐、. レ |
   l| | l. i i||.}ノ,ノ`-、 }-'´      d⌒) ./| _ノ  __ノ
.   ゞi、||__レル'レ' ヽ ,,,._ ノ
    `゙^ =- '´  ̄ `´

撫子さん誕生日おめでとう!中身は誕生日と関係ないけど!!


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■コメント

 [名無し]

最高じゃん
なでかのもっと増えろ

 [名無しさん]

結ちなよりなでかのの方が断然多い不思議!
■コメント


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