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向日葵「きっと、ずっと、あなたと……」

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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:01:45.33 ID:oGzpTGGb0

夏の日差しがジリジリと身を焦がす

櫻子は額に汗を滲ませ膝に手をついて息を切らしていた

「暑い……あっつい……」

髪を伝って滴り落ちる汗

「文句を言う前に、日陰に避難したらどうですの?」

遠巻きに見ていた向日葵が呆れた様子で手招きをする

「なんで向日葵は一緒にやらないんだよ」

コンクリートの黒いシミを見つめてうわ言のように呟いた


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:05:46.15 ID:oGzpTGGb0

「こんなに暑いのに櫻子は元気ですわね」

「ぜー……はー……どこをどう見たら元気に見えるんだ」

櫻子にしては珍しく息を切らせている

鬱陶しい蝉の輪唱を背負いながら毅然とした態度の向日葵が言う

「さっきまであんなに元気だったじゃない」

「さっきはさっき、今はもうダメ……」

木陰に設置されたベンチに腰掛け木漏れ日を避けて小さな森林を見上げた

「まあ、これだけ暑かったら無理も無いですわね」

「ふー、涼しい……向日葵もっと扇いでー」

しょうがないと言いながら向日葵は手うちわを披露する


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:10:11.96 ID:oGzpTGGb0

「うむ、ご苦労」

「何様ですのよ……」

小さく入れたツッコミに櫻子は目ざとく食いつく

「えーと、殿?」

「何言ってますのよ……」

櫻子の戯言に向日葵はどこか懐かしさともどかしさを感じていた

「って、そうじゃなくてなんで向日葵はそんな涼しい顔してんの!」

「え……あ、そもそも櫻子が勝手に始めたことでしょう?」

整った呼吸を取り戻した櫻子は少し切なそうに詰め寄る

「一緒にやってくれたっていいじゃん……一人でやったってつまんない」


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:15:18.59 ID:oGzpTGGb0

「けんぱっけんぱっけんけんぱっ」

照りつける太陽がより一層憎らしい笑顔を浮かべている

「ケンケンパなんて何年ぶりかしら」

櫻子の頼みを断れる向日葵ではなく子供の遊びに興じた

「小さいころよくやったよね」

「懐かしいですわねー……」

思い出は遠い入道雲の向こうに置いてきたかのように薄く滲んでいた

「でも、どうして突然?」

「花子と楓がやっててやりたくなった」


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:20:23.09 ID:oGzpTGGb0

「もうだめ……」

「はやっ!」

その場にしゃがみ込み動かなくなる向日葵

2セットほどで弱音を吐く向日葵に櫻子は活を入れる

「こらっ! シャンとしろ向日葵!」

平手で背中を力いっぱい叩くいつだって櫻子は手加減をしない

「いっ! 櫻子……何しやがりますの!」

「ほら、元気になった」

まったく……と背中をさする向日葵はなぜか微笑んでいた


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:25:23.95 ID:oGzpTGGb0

櫻子と向日葵は365日いつも一緒だ毎日喧嘩をしている

「ふんふーん♪」

「何してますの、櫻子?」

「見て見て向日葵」

手元にあった物を見せつけるとふわりと香りが舞った

「あら、薔薇ですの?」

「えへへ、綺麗だったからつい、買っちゃった」

一輪の薔薇を持った櫻子は手を突き出して言う

「今日さ、向日葵誕生日でしょ? だから、あげるね」

「櫻子……ありがとう、うん、良い香りですわ」

「えへへ」

櫻子と向日葵は365日いつも一緒だ毎日喧嘩をしている二日を除いて


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:30:18.26 ID:oGzpTGGb0

「これから暑くなってくるかと思うと憂鬱で仕方ない」

6月中旬は梅雨真っ盛りでジメジメとして気も滅入る

加えて次に待っているのは夏の猛暑で生え揃ったカビが舞い上がるのだ

「なんだって向日葵はこんな時に生まれたんだよ」

「どうして生まれた日を非難されないといけませんの」

「しかも私より早く生まれてるし……」

櫻子は向日葵が自分よりも早く誕生日を迎えることに憤りを感じていた

「私のほうがゆーしゅーなのにオカシイだろ」

「誰が優秀ですって?」

「あーもー、髪も湿気吸ってぐしゃぐしゃじゃん!」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:35:57.89 ID:oGzpTGGb0

「ほら、櫛を通してあげますわよ」

正座をして膝の上をポンと叩く向日葵に飛び込む櫻子

「ん、よろしく」

いつも使っている櫛を取り出して艶のある櫻子の髪を撫でる

ウェーブのかかった割に通りやすい櫻子の髪を梳くが毎年この時期は絡みやすくてままならない

それ故に櫻子の髪を傷つけないよう向日葵はいつもよりずっと優しく扱った

「それにしてもさ、昨日のケーキ美味しかったね」

「ふふ……そうですわね」

毎日でも食べたいと向日葵は思った

「……太るよ」

「心を読まれた!?」


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:40:59.10 ID:oGzpTGGb0

「ほとんど向日葵が食べちゃって」

「私の誕生日ですもの、別にいいでしょう?」

年に一度の誕生日くらい好きなものを好きなだけ食べさせてもらいたい

向日葵はそう思いながらも櫻子の指摘が胸に応えていた

「私にももっと美味しい物食べさせろ向日葵!」

「まったく……しょうがないですわね」

今日も櫻子は向日葵の家でごはんを食べる約束を取り付ける

「昨日から私のほうがお姉さんですもの、櫻子の我侭にだって付き合いますわ」

「……ふ、ふーん」


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:45:34.81 ID:oGzpTGGb0

「今日は何を食べたいんですの?」

曇り空は日の陰りを早くする

夏至が近づいていたが一月程戻ったように感じられた

「ハンバーグがいいな、その上に半熟の目玉焼き!」

「目玉焼き……いいですわね、ええそれにしましょう」

「やったー」

伸ばした手を自然と握り合い帰路に就く短くなった今日を補うように

「ふふ……」

「えへへ」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:50:39.32 ID:oGzpTGGb0

十八番の歌を歌いながら向日葵はハンバーグをこねる

「でーばーでーわーたーくしーから愛をこーめてー」

「うーですの♪」

ハンバーグの中心にチーズを込め形を作っていく

「そーぞーできないみーらいーよりいーまがーだーいすっき」

「いぇい♪」

油を引いたフライパンにこねたハンバーグを並べ中火で焼き込む

「みーぎーてーをあーげてーそらゆーびさーしてー」

「さして~♪」

フライ返しで器用にひっくり返すと芳ばしい香りがキッチンに充満した

「うん、美味しそう」

匂いに反応した櫻子がキッチンに寄ってきた

「いい感じじゃん! はい、向日葵これ持ってきた」

「なんですの?」


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 21:55:16.86 ID:oGzpTGGb0

「花の型だよ、花子が今はまっててさ」

「あら、はなまるハンバーグ……いいですわね楓も喜ぶでしょうし」

櫻子の持ってきた型を巧みに操り花の目玉焼きを作り出す

「おお上手い!」

「型があれば誰でも作れますわよ」

「……」

共同作業で完成させたはなまるハンバーグを皿に盛り付けテーブルに並べる

「いただきまーす」

「いただきます」

「いただきますなの」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:01:00.71 ID:oGzpTGGb0

「もぐし!」

向日葵の用意したナイフも使わずにハンバーグにかぶりつく櫻子

「あむあむ……んん!? チーズ入ってるじゃん!」

「ちょっと櫻子、行儀が悪いですわよ」

注意を促す向日葵だったが

「私チーズハンバーグ大好き!」

屈託の無い櫻子の笑顔に向日葵はすっかり毒気を抜かれてしまう

「まったく……しょうがないですわね」

と櫻子の口元に付いたソースを拭ってあげた


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:05:28.35 ID:oGzpTGGb0

「お姉ちゃんと櫻子お姉ちゃんは今日も仲良さそうで楓も嬉しいの」

フォークを放り出し陶器が声を出す櫻子は力強く立ち上がった

「べ、別に向日葵となんか仲良くないもんね!」

意地を張る櫻子に対して向日葵はたしなめるように言う

「楓相手にムキになるんじゃないですわよ」

「別にムキになんかなってないし!」

二人の掛け合いを見ていた楓は微笑ましい物を見るように笑って一言

「やっぱり仲良しさんなの、えへへぇ」

櫻子は観念したように椅子に座り直し楓の頭を撫でた

「ん……」


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:10:28.41 ID:oGzpTGGb0

「あかりちゃんおはよー」

教室の扉を開けるとあかりが一人で席に座っていた

「あ、櫻子ちゃん向日葵ちゃんおはよぉ」

「おはようございます、赤座さん」

櫻子はちなつの姿が見えないことに気づいた

「ちなつちゃんまだ来てないの?」

「ううん来てるよ、でも今は部室に用があるんだって」

「ごらく部に? ふーん」

「へぇ……」


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:15:34.06 ID:oGzpTGGb0

チャイムが鳴るギリギリになってちなつは帰ってきた

「はぁ……はぁ……」

帰ってくるなりちなつは机に突っ伏す

「吉川さん……?」

顔をひた隠ししていたが向日葵はちなつの耳が紅潮していることに気づいた

「頑張ったんですのね」

声をかけられたちなつは顔を上げて返答した

「う……うん/// 返事はまだ……たぶん当分先になると思うけど」

「そう……ですの」

「私頑張った! 頑張ったよ!」

手を握りブンブンと振り回すその様子を櫻子が訝しげに眺めていた

「?」

それはもう訝しげに

「??」


35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:20:43.30 ID:oGzpTGGb0

しとどに濡れた子猫のように櫻子の髪はぴったりと張り付いていた

「……」

鳴き声もなくただ一人佇む櫻子に声をかける者はいない

ゆったりと流れる悠久の時を憂いるように

ただ一つの救いを求めるように

少女の名前を呟いた

「向日葵……」

言葉は空虚へと掻き消え櫻子を冷やす糧となり果てる

締め付けられる胸に手を添える足りないものを欲するように手を握る

「傘、忘れちゃった」


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:25:27.01 ID:oGzpTGGb0

「何してますの、櫻子?」

全身がずぶ濡れになった櫻子をハンドタオルで拭こうと向日葵は手を伸ばした

「もう、こんなに濡れて、雨宿りしていればよかったですのに」

髪の水分をワシワシと拭きとる向日葵は櫻子のふわふわの毛先がお気に入りだ

「ちょっと考え事してて……」

「考え事、ですの?」

珍しいですわねといつもの向日葵ならそう言っていた

しかし今の向日葵は言葉にしなかった

「ま、こういうのもたまにはいいかな……」

「なにか言いました?」

「ううん、何でもない、傘持ってるでしょ? さっさと帰ろ!」


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:30:11.98 ID:oGzpTGGb0

「うー……風邪引いたかも……」

ふらつきながら櫻子は玄関に顔を出した

「櫻子が風邪?」

「うう……」

寒気に震える櫻子に気づき向日葵は大層慌てた

「まさか、ほんとに!? だ、大丈夫ですの?」

倒れ込みそうになった櫻子を抱きかかえ言葉を続ける

「大丈夫……じゃなさそうですわね……熱もこんなに!?」

額をくっつけて熱を計ったあとぐったりとした櫻子を抱き上げた

「まったく……ベッドに運びますわよ」

「雨に濡れたのがまずかったかな……」


43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:35:20.33 ID:oGzpTGGb0

「んー……」

櫻子をベッドに貼付け体温計を咥えさせて向日葵は濡れタオルを用意しに行った

「……こんなこと、昔もあった気がする」

「ありがと……向日葵」

向日葵が訪ねてくるまで大室家には櫻子一人

滅多にひかない風邪で心細かった

「櫻子、開けますわよ」

「うん……」

桶に水を張り湿らせたタオルをおでこに乗せる

「ん……ふぅ……」


45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:40:23.00 ID:oGzpTGGb0

「落ち着きまして?」

「うん……だいぶ楽になった」

タオルを三回ほど替えたころ櫻子の容態も落ち着きを取り戻していた

「でも、遅刻じゃん……」

「いいですわよ……今日は休みますわ」

「なんで?」

「……櫻子に風邪を移されてしまったということにでもしますわ」

櫻子は乱れた布団をたぐり寄せ口元まで引っ張り隠れるようにして言う

「仮病だ……えへへ」


47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:45:29.85 ID:oGzpTGGb0

「向日葵……さ」

「なんですの?」

布団の中で目をつぶったまま櫻子が話しかける

「お姉ちゃんみたい……」

「……撫子さん?」

「ううん……ねーちゃんじゃなくて、なんて言ったらいいんだろ……お姉ちゃん」

切り返しの言葉を見つけられず向日葵は狼狽えてしまう

「えと……それって……?」

向日葵の問いかけで自分の言葉を噛み締めた櫻子が赤かった顔を更に赤くした

「な、なんでもない! 忘れて!……ゲホッゲホッ」

「だ、大丈夫ですの!?」

咳き込んだ櫻子を寝かしつける向日葵だったが胸にもやがかかったままだった


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:50:25.62 ID:oGzpTGGb0

翌日元気になった櫻子にそれとなく聞いてみた向日葵だったが

はぐらかされているのかはたまた忘れているだけなのか話題が盛り上がる事はなかった

「もうそろそろ梅雨も明けますわね」

夏も近い空には虹が目立つことも多くなった

「もうすぐ海開きだし、海行きたいね海」

「そうですわね」

「あかりちゃんとちなつちゃんも誘ってさ」

向日葵が新しい水着も買わないとと言うと櫻子は苦い顔をした


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 22:55:40.69 ID:oGzpTGGb0

夏休み遠い入道雲が存在を主張する

海には海月空には海鳥砂浜にはヤドカリがそれぞれの縄張りを支配すべく画策する

7月とはいえ夏は熱気に満ちている

「向日葵ー海だよ海!」

「早く泳ぎたいですわね」

「櫻子ちゃん向日葵ちゃん、今日は誘ってくれてありがとう」

「せっかくだからお言葉に甘えちゃった、でも本当は二人で来たほうが良かったんじゃない?」

からかうようなちなつの目にも向日葵は動じなかった

「みんなで来たほうが楽しいですわよ」

それに聞きたいこともある……向日葵はちなつを見ながら言った


54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:00:44.50 ID:oGzpTGGb0

櫻子はあかりと海で遊んでいて時折向日葵に目配せする

「吉川さん」

しかし向日葵はそれに気が付かない

「どうしたの向日葵ちゃん?」

「その、こんなこと聞いていいかわからないですけど……」

「うん、なに?」

「えっと……返事……」

「あ……」


56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:05:10.65 ID:oGzpTGGb0

「その話かー……」

「や、やっぱり聞かないほうがよかったですわよね」

「ううん、まだ返事もらってないからなんて言っていいかわからなかっただけだよ」

「あら、そうでしたの」

「うん、休み明け……かな?」

あの日今までのちなつではなく本気の告白を結衣にしていた

マフラー作りを手伝った時にちなつが一方的に話していたからその想いを向日葵も知っていた

「どっちに転んでも、私は後悔しないよ」

「だって、自分の思いを真っ直ぐぶつけたんだもん」

「……」


59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:10:15.22 ID:oGzpTGGb0

「いやー、楽しかったね」

海で遊んで数日

櫻子の話題はそればかりだった

あかりと何をしたかあかりがどうしていたか

それでも向日葵は張り合うようにちなつとの話をするわけではなかった

「櫻子、宿題ちゃんとやってますの?」

「写させて!」

「自分でやりなさいよ」

「お前は私のお姉ちゃんか!」


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:15:18.46 ID:oGzpTGGb0

「え?」

「あ……」

「どういう……意味ですの?」

風邪の日の再来は突然だった

「その……」

「その?」

「お姉ちゃん……みたいだなって」

「だから、撫子さんですの?」

「ねーちゃんじゃなくてさ……ほら、漫画とかでよくいる……お姉ちゃんっていうか」

「……」

向日葵の沈黙に蝉の声がうるさく響く


63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:20:17.64 ID:oGzpTGGb0

「もう! 自分でもよくわかんないよ!」

櫻子は自分に対して姉を求めているように向日葵は感じた

複雑な心情の中でそれも悪くないものだとも思った

「私が櫻子のお姉ちゃんですの?」

「えっ……あ、お姉ちゃん……悪くない、かも」

「なんだか撫子さんに悪いですわね……」

櫻子を独占しているように感じたからだ

「おね……やっぱやだ、向日葵のことお姉ちゃんとは呼びたくない」

「お姉ちゃんみたいな向日葵! ってことで」

複雑な心境だった


65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:25:23.30 ID:oGzpTGGb0

猛暑は体中の水分を奪っていく

夏真っ盛りそれでも子供は元気だった

蝉の輪唱を背負いながら花子は楓とケンケンパをしていた

「けんぱっけんぱっけんけんぱだし!」

「花子お姉ちゃんすごいの!」

「楓にもできるし! やってみるし!」

その様子を櫻子は日陰で肘をつきながら眺めていた

「やってみるの」

「けんぱっけんっわわっちょっと遠いの」

「か、楓……ごめんちょっと大きかったし……こっちに小さいの書くし!」

「わぁい! ありがとう、花子お姉ちゃん!」

「でへへだし……花子に任せるし!」

「ふむ……」


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:31:01.85 ID:oGzpTGGb0

「はぁー……私までこんなに疲れてしまいましたわ」

ケンケンパを終えた向日葵は玉の汗を浮かべ櫻子に抗議する

「軟弱だな向日葵は」

「さっきまでへばってた人間の言葉じゃないですわね……」

「えへへ」

どちらともなく手を繋ぎ家を目指す

「クーラーが恋しいなー」

夏の日差しも文明の利器には敵わない


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:35:32.25 ID:oGzpTGGb0

残暑険しい新学期を迎えた

「今日から学校再開かー、あかりちゃんたちとも会えるね」

「そうですわね」

向日葵はちなつの事を考えていた

休みが明けたということは一つの答えが出るということだ

本人でもないのに向日葵は緊張していたもちろんそれを悟れない櫻子ではない

「どうしたの、向日葵なにかあった?」

「いえ、私は何もないですわよ」

嘘は言っていない櫻子にもそれはわかった

「そっか」


71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:41:13.39 ID:oGzpTGGb0

教室にはあかりがいてちなつはいなかった

「あかりちゃんおはよー」

「あ、櫻子ちゃん向日葵ちゃんおはよぉ」

「おはようございます、赤座さん」

ちなつはごらく部にいるのだという

「……」

向日葵にはただ教室から祈ることしかできない


74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:46:12.90 ID:oGzpTGGb0

「おはよー!」

ちなつはチャイムが鳴るぎりぎりに帰ってきた

「ちなつちゃんおはよー」

「おかえりちなつちゃん」

「ただいま……ふー、間に合ってよかったー」

「結構危なかったですわね」

「えへっまあね」

二学期初日ということもあって始業式だけで終わった


76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:50:59.60 ID:oGzpTGGb0

「あっそうだ! 今日みんなで何か食べに行こうよ!」

ちなつが明るい声で三人を誘う

「おお、いいね!」

向日葵は今日一日ちなつに違和感を覚えていた

「いいんですの?」

「え……」

ちなつの目から大粒の涙が零れ落ちた

「吉川さん……! 櫻子はここで待ってて!」

「え、な、なに?」

「あかりもいるよぉ……」


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/09(金) 23:55:42.29 ID:oGzpTGGb0

「吉川さん……あなた……」

「向日葵ちゃん……向日葵ちゃぁん……」

「私……振られた……振られちゃったぁ……ぐす……ぐすっ」

「そう……でしたの……」

「泣かないって決めたのに……決めてたのに……うぅ……」

向日葵はちなつの肩を抱いて慰めた

止めどなく流れる涙が向日葵を濡らす

「泣いても……いいんですのよ」

「辛い時は泣かないと……吉川さん、頑張ったんですものね」

「うわあああぁぁぁぁーーー……」


80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:00:32.61 ID:KzxZkYZ20

「ひっく……ひっく……」

ちなつは何分も泣き続けその間向日葵は頭を撫でて慰めた

「結衣先輩ね……私のこと妹みたいなものだって……」

「だから、恋人には…………なれないって……」

「私、ほんとはなんとなくわかってた……」

「結衣先輩には京子先輩がいるんだもん……」

「それでも私、結衣先輩のそばにいたい」

向日葵は何も言わずちなつの言葉を噛み締める

「恋人になれなくても、振り向いてもらえなくても」

「それって……間違ってるかな……いけないことなのかな……」

「なにも……悪くないですわ」

「……そっか…………よかった」

咽び泣くちなつを抱きしめながら向日葵は櫻子とのことを考えていた


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:05:23.53 ID:KzxZkYZ20

数日経ちちなつも徐々に落ち着きを取り戻し始めたころ

櫻子にとって自分はなんなのかと向日葵は考えていた

「櫻子は……私のことを……」

お姉ちゃん

背筋が凍える

「私は……私は……」

「櫻子にそんな風に思って欲しく……ない、ですわ」

「姉と妹だなんて……」

しかしそれを決められるのは櫻子で向日葵ではない

向日葵がなんと言おうと櫻子が姉だと言ってしまえばそれまで

自分の気持ちに気がつくのが遅すぎたのだ

「私は、櫻子が……どうしようもなく好き、なんですわ……」


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:10:47.78 ID:KzxZkYZ20

「向日葵、何してるのさっさと帰るよ?」

「あっ、そう、ですわね」

「どうしたの?」

「櫻子……私……」

言葉が出てこず櫻子とじっと目を合わせたままだ

「まあ、何でもいいけどさ、今日のごはん何?」

「今日も食べていきますの?」

「えっ、だめなの!?」

向日葵は櫻子と一緒にいたい気持ちと姉を払拭するために離れたい気持ち

その二つが拮抗した結果同じ時間を過ごすことに決めた


86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:15:14.70 ID:KzxZkYZ20

「私は櫻子に、どうして欲しいんですの……?」

いつも一緒にいた二人に流れるのは今更の二文字

変わらないと思っていたずっとこのままだと

でもそれこそが向日葵を苛む最大の要因で……

「私は櫻子と、どうなりたいんですの……?」

考え方を変えれば答えは簡単だった

「ああ……そうか」

どうなりたいだなんて具体的なことは必要ないただ向日葵は櫻子と

「私は櫻子と……一緒になりたい」


88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:20:35.72 ID:KzxZkYZ20

向日葵は、櫻子の家を訪ねた

「さ……櫻子」

「ひま子? 櫻子ならいないけど」

「あ……そうなんですの」

がっかりしたような、ホッとしたような、複雑な気持ちだった

「櫻子に何か用? 伝えておくけど?」

人づてに聞かせるようなことでもなく、内容を考えると頬が染まる

「い、いえ……大丈夫ですわ」

「ふーん……あ、そうだちょっと待ってて」

撫子は、奥に何かを取りに行った


90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:25:40.63 ID:KzxZkYZ20

「はい、これ」

戻ってきた撫子は、一枚の紙を向日葵に突きつける

「これ……は?」

「昔これ書いたの覚えてない? 櫻子はすっかり忘れちゃってたけど」

朧気な記憶の奥に眠っていた思い出

「婚姻届……」

「なんとなく……ですけど」

子供の頃の遊びだった、それでも本気だった

「私は……ずっと昔からそうだったんですのね」


92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:30:30.45 ID:KzxZkYZ20

小さい頃の思い出を、一つひとつ思い出す

モヤのかかっていた思い出たちが、鮮明に映し出される

風邪の看病も、ケンケンパも、婚姻届も

「櫻子……」

櫻子の誕生日は、近い


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:35:40.83 ID:KzxZkYZ20

「櫻子、誕生日おめでとう」

「おめでとうだし」

「ありがとーありがとー、プレゼントは何かな土地の権利書かな?」

期待に答えられずすみません、と撫子は土下座をした

「いやー、誕生日っていいものだね」

「そういや櫻子、ひま子から誕生日プレゼントもらったの?」

「まだだった、今からもらいに行こう!」

「ちょっと櫻子、なにか忘れ物してない?」

「ッ、そうだった」

何も知らない花子は、頭にはてなを浮かべたまま櫻子を見送った


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:40:45.67 ID:KzxZkYZ20

「おーい、向日葵ー」

靴を脱ぎ散らかしながら、向日葵の家に上がり込む

注意する人は向日葵以外にはいない

「私今日誕生日なんだ!」

「知ってますわよそれくらい」

「なんかくれ!」

厚かましく手を伸ばす櫻子にも、寛容に相手をする

「ちゃんと用意してましたわよ、はい」

「あ……薔薇だ…………綺麗だな」

「誕生日、おめでとう櫻子」

「うん……」


98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:46:55.32 ID:KzxZkYZ20

「それで、その……言いたいことがあるんですのよ……」

「なに?」

「その、私のこと……お姉ちゃんって……」

口を閉ざしたまま、櫻子は耳を傾ける

「呼ばないで……思わないで欲しいんですの」

「なんで?」

「なんでって……それは……」

「先にお姉さんぶってたのは向日葵の方じゃん、だから私もそういうのも悪くないかなって」

「あ……」

原因を作ったのは、自分自身だった


99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:50:32.79 ID:KzxZkYZ20

事実を知った向日葵は激しく後悔し、櫻子を正面から見ることができない

「なんで目を逸らすの?」

「うぅ……」

「でも今日は私の誕生日! もう向日葵にお姉ちゃんだなんて言わせないもん」

「え……?」

「何がお姉ちゃんだ、私の方がゆーしゅーだもん!」

梅雨の曇り空のような心に、光が差すのを感じた、向日葵の杞憂に過ぎなかったのだ

「櫻子……!」

「それでさ、向日葵……これ」


100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 00:56:02.70 ID:KzxZkYZ20

「なんですの?」

「これ書いて欲しいんだけど」

櫻子の手の中には、くしゃくしゃになった婚姻届があった

「あ……じ、実は私も!」

そう言って、向日葵は隠してあった婚姻届を取り出した

「考えることは一緒なんだね」

「ふふ……そうですわね」

「えへへ……ありがとう、最高の誕生日プレゼントだよ」


102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 01:01:03.06 ID:KzxZkYZ20

「子供の遊びじゃなくて、今の私達で……」

「うん……書こうね」

「好きですわ、櫻子……大好き」

「私も……大好きだよ、向日葵」

「あの……いつからですの?」

櫻子は、婚姻届を掲げて言った

「向日葵と一緒だよ!」


103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/10(土) 01:05:18.73 ID:KzxZkYZ20

幼少からの想いを遂げて、愛しあう二人は誓い合う

「きっと、ずっと、あなたと……」

「一緒にいようね」


おしまい




「一枚余っちゃった」

「どうしましょう」

「そうだ、花子にあげよう」

「そうですわね……捨てちゃうのも勿体ないですし」

「……ねえ櫻子、薔薇の花言葉って知ってます?」

「知ってるよ……愛してる、向日葵」

優しい表情を浮かべる撫子が、微笑みながら呟いた

「ふー、暑い暑い」

文明の利器も、二人の愛には敵わない


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