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さくひま短編『夢であえたら』

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【ゆるゆり】大室櫻子ちゃん&古谷向日葵ちゃん応援スレ【ひまさく】 からの短編です。


612:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:18:51.25 ID:2KF84vYb0

「あーもう向日葵はうるさいな!」

「うるさいのはあなたですわ! 時間を考えなさい!」

二人の少女の言い合いが響く。
しんと静まり返った外の世界に溶け込むことなく、雑音は夜の闇を乱しながら広がっていく。

良い子は寝る時間。
でも、こんな時間にご近所をかえりみず騒いでいる悪い子は、まだ友人の部屋に。

「向日葵がうるさいから私もこうなるんでしょ!?」

「なっ……自分の事を棚に上げすぎですわよ!?」

「それがうるさいんだって!」

発端はなんだったか。
……取り立てて気に留めることでもない、櫻子と、私らしい、いつものこと。

「だいたい、櫻子はいつも……!」

「あーもういいよ! うるさい向日葵になんかいちいち構ってらんないもんねー!」

うるさいうるさい。
櫻子はいつもこう。
自分のことしか考えず、騒ぎ立て、掻き乱す。

……それが、気に障る。 ……はずなのに。


614:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:19:19.01 ID:2KF84vYb0

「ちょっと櫻子!?」

「おやすみっ!!」

背を向けて駆け出す。
勢いよくあけた障子を、ピシャリとかたく閉ざして。

それ以上の会話は不毛だという言葉を、体でもあらわすために。


そして、望みもしない静寂が唐突に訪れる。


……いや、そんなことはない。
大概にしていつも常に四六時中、櫻子はやかましいのだ。
今だってそう、ご近所の迷惑だなんて考えもしない。
座り込んで、まぁるい座卓に上体をあずけながら思いをはせる。

「こんなときにもおやすみを言うだなんて……あの子らしい」

ほんと、櫻子らしいですわ。

だんだんと遠ざかる足音。
かすかに聞こえる妹との会話。
この家を出る、音。

静けさを増していく部屋の中でひとり、つぶやいた。


615:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:20:28.12 ID:2KF84vYb0

静ひつ。
すぅー、すぅー、と、穏やかな吐息。
先ほどまでのやり取りと打って変わって落ち着いた、一定のリズム。
生気のない部屋と一体化するような、生きている証。
漫然と繰り返される呼吸の数をかぞえていたら、そっと障子を開ける音がぼーっとした頭に届いた。

「お姉ちゃん……元気出してなの」

楓……そっと妹が顔を覗かせる。
とても、心配そうに。

……いけない姉ですわね。

心の中だけで自分を叱りつける。
そして叱咤のそのままに、笑顔をつくる。

「いえ、なんでもありませんわ」

「でも……」

なおも慮ってくれる優しい妹をやんわりと制し、もう寝る時間ですわねと布団へいざなう。

そうですわ、良い子はもう寝る時間。
こんな時間まで夜更かししているのは、悪い子。
悪いことをしたら……ごめんなさいをしなくちゃいけませんわね。

素直で心優しい妹の規則正しい寝息が聞こえ始めたころ、
私の意識も静かな静かな世界へと落ちていった……。


616:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:20:47.32 ID:2KF84vYb0




…………。

……。





617:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:21:23.21 ID:2KF84vYb0

モノクロの世界。

白と黒で縁取られた、いつもの町並み。

自分が日常を過ごす、見慣れた風景。

そんな世界で私は、自分がよく使う駅のホームに、座っている。

いつもの世界に一つ、おかしいことは一つだけ。

色のない世界には、人の気配もない。

……そう考えると足りないものは二つだったか。

ともかく、明らかに現実と異なる世界。

でも、『モノ』に関しては何一つ変わりない。

チクタクとまわる時計も、電車の到来を告げるアナウンスも、慣れ親しんだ『それ』のまま。

ホームに入ってくる電車も、全くの無人であること以外は異常なく。

人っ子一人として、居ない。
……そのはずの世界で。

―――こうして、目に見えているのに。

唯一隣に存在する、彩りのないその子からは、何の気配も感じられなかった。


618:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:22:25.43 ID:2KF84vYb0

笑っている。
穏やかに微笑んでいる。

それを見つめる自分の表情は、果たしてどうだろうか。

「櫻子……わたくし」

「なぁに? 向日葵」

乾いた声が響く。

……いや、いつもと変わりないはずだ。
無機質に聞こえるのは、きっと自分の心のありようのせい。

二の句が継げなくなっている自分を奮い立たせ、言葉をつなげる。

「あの! ……私、櫻子に、謝らなきゃいけないと、思って……」

「うぅん、向日葵、私こそごめんって、言わなきゃいけない」

これは夢だ。
わかっている。
こんな素直な櫻子には、きっとそう……。


たぶん、夢でしか。
夢の中でしか、あなたには会えない。



619:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:24:47.98 ID:2KF84vYb0


「……本当に、そう?」


え?

夢の中の、私の中の櫻子に問いかけられる。
夢って、自分の都合のいいように進むんじゃないのかしら?
……でも、これさえももしかしたら自分にとって都合のいい話なのかも。

そんな自嘲を気にもとめず、櫻子が続ける。

「わかってるんじゃない? 素直になれないのは、お互い様だって」

「……」

「『素直じゃない』わけじゃない。『素直になりたくない』とか、あるわけない」

心がしぼんでいるわけじゃないのに、言葉を紡ぐことが出来ない。
でも、もしかしたら、そんな私の心を代弁してくれているのかもしれない。

口をぽかんと開けることしか出来ない、黙ったままの私の前で、櫻子は止まらずに言葉を続ける。

心に沁み入る。じんわりと、広がっていく。
うわべだけじゃない心からの言葉が、自分の奥底から溢れてくる。


櫻子のことが、こんなにも大事なんだと、改めて自分の中に満ち渡る。


620:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:25:14.45 ID:2KF84vYb0

「本当にごめんなさい、櫻子」

こんな簡単な言葉が、たった一言が伝えられない馬鹿な子で。

「―――さて」

相手の返事を待たず、立ち上がる。
そして、いまだ停車しながらその口を開けている電車に向かい。

「向日葵……これに乗れば、起きられるよ」

「そうみたい、ですわね」

「私が……いるよ」

偽りのあなたがいる世界。本当のあなたがいない世界。
素直じゃない、ふたりの女の子がいる世界。

そんなの、天秤にかけるまでもない。


627:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:49:47.10 ID:G9jhNkc80

「じゃあ、『私』はずっとここにいるけど……あんまり会いに来ちゃ、だめだからね?」

わかっていますわ。
返事をそう心に強く刻む。

乗り込んだ電車は、夢の終わりの終着駅へ。
振り返ると、窓の向こうにたたずむ少女が。
白と黒のはっきりとした世界、そこに居る色のない櫻子にそっと手を振り、別れを告げる。

本当の櫻子は、もっともっとうるさくて傍若無人でわがまま娘で。
でも天真爛漫で、いつも輝きであふれかえっている。
表情も、動きも、発する言葉も、ころころころころと様々な色を見せてくれる。

櫻子。

……どうか、夢の終わりで……たどり着いた駅の改札口で、待っていてくださいな。

走り出したその車内から見る景色がどんどんと白に塗りつぶされていくのを感じながら、
私の意識も、一面の白にとけ広がっていった……。


…………。

……。




628:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:51:38.87 ID:G9jhNkc80

ゆっくりと、意識して目を開く。

見慣れた光景。
毎朝こうしてベッドから見る、総天然色。

頭はすっきりしている。
普段は低血圧のせいで、起きてからしばらくは世界がずしりと重いのに。

よく、眠れなかった?
いいえ、そうじゃない、そういうことじゃない。

よく、かんがえることができた。
頭の中で、まとまった。

これなら、昨日言えなかった言葉が、言えそう。
夢の中のあなたにしか言えなかった言葉を、伝えられそう。

素直に……なれそう。


―――ふいに。


「あ……」




629:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:56:07.91 ID:G9jhNkc80

「……向日葵、起きてたんだ」

か細い音に続き、視界の外から声がかかる。
振り向くと、開いた障子に手をかけたままに、櫻子が、立っていた。

普段は朝の遅い櫻子が、そこに。
しかも、障子の開ける音を気付かせないように、丁寧に。

すっと、部屋の中へ一歩を踏み出す。
掛けられた布団を横に追いやり、ベッドから出る。

お互いがお互いの目の前に、立つ。

相対すると、
少し、見上げる形になる。
少し、見下ろす形になる。

でも、心は対等に。いつものように、視線を合わせる。

少し息を吸って。
おはようよりも先の、第一声は。


「あのさ、向日葵―――」
「わたくし、こそ―――」




――完――


630:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/01(木) 08:57:14.36 ID:G9jhNkc80

今日は恋愛お題ったーじゃなく、3つの恋のお題ったーより、『夢でしかお前に会えない/駅の改札口で待っていて/お前がいない』をば。

以上、さくひま短編『夢であえたら』のお話でした。


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■コメント

 [名無しさん]

不思議な話で大変よろしい

 [名無しさん]

この人の作品の完成度すげえ

 [名無しさん]

いやーさくひまスレに張り付いてますなぁ
■コメント


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