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京子「アッカリーン」

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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 12:25:23.40 ID:vsfN+0+DO

子供の頃の私、歳納京子は泣き虫だった。

本当に軽いことでも泣いていた。

転んだり、苦いものを食べたり、テストで間違えたり、暗い場所に入ったときとか、そういうことで泣いてた。

なにか怖いものがあると結衣が庇ってくれた。ある意味、あの頃の結衣は私にとってはナイトみたいなもので、幼心に頼っていた。

先頭を切って何かを進んでやる姿勢はかっこよかったから、私の行動は自然と結衣に似ていった。

だからかもしれないけど、今は結衣を私が引っ張り回している感じで、それは結衣からもらったものだ。

だから、自然と考えてしまう。

京子『なら、あかりは私に何かくれたのかな?』


2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 12:41:10.46 ID:vsfN+0+DO

昔のあかりは一言でいえば、変なの子だ

天真爛漫というか、無駄にうるさかったし、葉っぱ仮面とかを簡単にやるような、そういう女の子だ。

その頃の私を気弱な王女様とするなら、結衣がナイトだろうけど、あかりは今でもよくわからない。

京子「なあなあ、あかりってさ。なんか取り柄ってあるの?」

あかり「京子ちゃん。面と向かってそういうこと聞かないでよー」

京子「いやだってさ、存在感が――」

あかり「いやぁぁー、それ以上言わないでー」

慌てるあかりを見ながら、なんとも不憫だなー、んて思い始める。

この頃のごらく部の活動はなかなかにぐだっている。

だから何かと暇つぶしをしたくなるのだ。

まだ、ちなつちゃんに結衣が来ていない部室の中、お茶を啜りながら、なにかおもしろい事はないかと模索する。


4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 13:04:47.12 ID:vsfN+0+DO

長くて四人でできるものがいい、考えてるとあかりが何か読み始めたので見てみると、絵本のようだった。

京子「それなに?」

あかり「白雪姫だよ」

白雪姫とはなんともメルヘンチックなものを読む。

しかし、小人たちに囲まれながら生活する姫か。あかりはそういう姫様に憧れてるのかな?

京子「あかりは白雪姫の中で何になりたい?」

あかり「何になりたいかー。うーん」

考えるように首を傾げてから、少ししてから。

京子「京子ちゃんは何なりたい?」

逆に質問されてしまった。


5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 13:30:54.15 ID:vsfN+0+DO

京子「そうだなー。ちなつちゃんに白雪姫やってもらえるなら、王子様だな!」

あかり「王子様かー、やっぱりかっこいいよね。はあー、ちょっと憧れちゃうなー」

京子「そういうあかりはなにがいいんだ?」

その言葉にあかりはただ、一言述べた。

あかり「あかりは鏡か王妃様でいいかな?」

なんとも存在感のあるキャラクターを選ぶ辺り、やはり気にしているのか。

あかり「京子ちゃん、なんでそんな惨めな子を見るみたいな目をしてるの」

京子「いや、なんだ。不憫な子だなって」

あかり「不憫っていわないでよー!」

と、そこで遅れてちなつちゃんと結衣がやってきて、ちょうどよくやることが決まった。

京子「ごらく部の今回の活動は『劇』に決めた!」


6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 14:18:58.37 ID:vsfN+0+DO

急遽すぎたということもあったが、みんな賛成という形で、白雪姫もどきをやることになった。

もどきの理由としては、まず観客が知り合いだけ。人数関係上、小人が不在出せないことだった。

綾乃や千歳は手伝ってもいいと言ってくれたが、観客がいなくなると困るので断っておいた。

そして気になる配役であるが………

京子「げげっ、まさかの鏡」

結衣「王子様か」

ちなつ「結衣先輩、その、本番は熱いキスでお願いします」

あかり「あかりは王妃様だ」

京子「結衣!鏡役と王子様役交換して!」

ちなつ「ちょっと京子先輩、そういうのは無しですよ!」

そう言いながら結衣にくっつくちなつちゃん。王子様役になれれば、ちなつちゃんとチュー出来たのに。残念である。


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 15:04:27.00 ID:vsfN+0+DO

ちなつ「じゃ、結衣先輩。練習しましょうー」

結衣「ちょっと、ちなつちゃん待って」

早々に2人がいなくなって、最初のように二人きりになった。あかりは少しだけ不安そうな顔で私を見てくる。

あかり「ちゃんとできるか心配だなー」

ちゃんと練習すれば大丈夫だろ、そう言って手に持った鏡役と書いてある紙をヒラヒラと動かす。

京子「鏡役って書いたのはいいが、まさか私に回ってくるなんてなー」

あかり「やっぱり京子ちゃんは王子様の役がやりたかったの?」

その言葉に、結衣が王子様役にはぴったりだってことをわかってる自分がいて、言葉を濁した。

京子「そういうあかりは、王妃役でよかったじゃん。出番もそれなりにあるしさ」

なにより可愛さをちなつちゃんに取られたあかりが、仕返ししているような絵に見えなくもない。


8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 16:33:43.93 ID:vsfN+0+DO

そんなことを思いながら、私は自分に与えられた鏡役を考える。

鏡役、今の私が昔の結衣の姿をまねしているようなものなのだから、これはこれで間違っていないものだろう。

京子「まあ、妥当な役かなー」

あかり「京子ちゃんにはお姫様とかの方がいいと思うんだけどなー」

あかりの言葉に、思わず笑いかけた。

京子「私がお姫様とか、あかりはおもしろいこというね」


9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 16:56:48.16 ID:vsfN+0+DO

あかり「だって、京子ちゃん可愛いところいっぱいあるもん」

京子「ちょ、いきなりなに言い出すんだよ。可愛さならちなつちゃんが一番に決まってるじゃん」

あかり「そんなことないよー。あかりは京子ちゃんの可愛いところいっぱい知ってるもん」

そう言って、あかりは笑った。


10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 17:55:53.54 ID:vsfN+0+DO

あかりは私のことを可愛いといったけど、私にはそんな自覚も無ければ、自信もなかった。

だって、歳納京子は誰かを真似しながらここまできたのだから。

なんだか変なことを考えている。そんなこときにしなくてもいいのに、そうしていると、あかりが私の前に座る。

あかり「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのはだれ?」

真剣な眼差しでそう聞いてくるあかりに、私はすぐに答えられなかった。

京子「え、えっと。誰だろ?」

なんて答えればいいのか、わからないままにそう言うと、あかりはなんだか拍子抜けしたように表情を崩した。

あかり「そこは白雪姫か王妃っていわなきゃー、練習にならないよー」

もう練習なのかと、珍しくあかりに主導権を握られてることに、なんだか私らしくないと思った。
京子「よーし。あかり!がんがん練習するぞー!」

あかり「うん、だけど。あかりたち出番少ないね」

京子「そう言うことはいわないでもらいたかった」


12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 18:30:54.35 ID:vsfN+0+DO

しばらくの間、あかりと一緒に劇の練習をしていて気がついたことがある。

家に帰って机に向かいながら、この白雪姫もどきの内容に頭を抱えていた時であった。

京子「あかりと二人っきりってかなり久し振りだったんじゃないか?」

あかりと二人っきりで遊んだことがあったか色々考えてみて、一度だけあったことを思い出した。
まだ、私が泣き虫だった頃。結衣が熱で休んだときだったか。

私は結衣がいないってことだけでも泣いてたはずだったけど、何故だかその日泣いた記憶はなかった。

京子「なんで、あのとき泣いてなかったんだろ?」

深く考えても、なかなか答えはでない。忘れているのかもしれないなんて思いながら、鏡役のセリフを考えて、それが終わったらベッドに倒れた。

なんであかりのことでこんな悩んでいるのか、それがわからなかった。

京子「なんで、あかりは王妃なんてやりたいっていったんだろ」

あかりの性格と、王妃の性格は真逆なはずなのにである。

あかりの性格を考えたら、お姫様とかのほうが似合っている。
優しいし、私もそれに子供の頃に助けられた。

京子「あかりは私に優しさをくれたのかな?」

でも、私はそんな優しい子じゃないと。なぜかその考えを否定して、布団をかぶる。


13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 18:57:48.22 ID:vsfN+0+DO

眠ってしまえば楽になれる気がしたけど、久々のごらく部の活動には力を注ぎたくて、台本もどきを作っていく。

鏡と王妃の登場シーンは、王子様と白雪姫の出番の半分にもみたない物だった。

鏡の出番は王妃よりも少ないけど、鏡にはちょうどいいかなんて思った。

そしてもう寝ようと目を閉じた。

いやな夢を見なければいいけど、そんなことを考えながら眠る。

なんだか、無駄に疲れてしまった。


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 19:15:50.64 ID:vsfN+0+DO

あかり『京子ちゃん、今は結衣隊長がいないけど、大丈夫!』

京子『外は怖いよ。結衣がいないと、私……』

手が震えてた。

いつも私を引っ張ってくれてた人がいなかったから。

だから家から私は出るのを拒んでた。外に行くのが怖かった。

あかりには悪かったけど、あかりが私を守ってくれる気はしなかった。

これはその日の夢なのかな?

あかり『じゃあ、京子ちゃんのお家にあがってもいいかな?』

そうだ、この日はあかりが家に来てくれたんだ。

あかり『京子ちゃん!一緒に結衣隊長の風邪が治るように一緒に応援しよう!』

京子『わ、私でもできるかな?』

あかり『大丈夫だよ!京子ちゃんにだって出来るよ!』

そう言ってるあかりは終始笑顔で、私を不安にさせないためにそうしてたのかなって思えた。

これは夢。

夢で、泣き出しそうな私はあかりの笑顔とかを見てて、悲しい気持ちが消えていったように、その日笑顔だった。

あかり『京子ちゃんの笑った顔、あかりは大好きだよ』

京子「って!なにいってんだー!」


15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 19:25:37.25 ID:vsfN+0+DO

あかり「みんなおはよー」

いつも通りの通学路、なんだかあかりと顔を合わせ辛いのは、やはり夢のせいだろう。

子供の頃の夢、しかもその夢の中のあかりに見取れていたということが、私の心境を複雑にしていた。

結衣「どうしたんだ京子」

京子「な、なにがだー?」

結衣「いや、やけにソワソワしてる気がしてな。なんかあったのか?」

なんでこういうときに限って勘が鋭いのか。そう思いながら目線を反らすと。

あかり「京子ちゃん、なにか悩み事?あかりなら力になるよ」

京子「あ、アッカリーン!」

思わず走り出していた。


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 20:34:38.69 ID:vsfN+0+DO

教室についてからしばらく結衣に気を使われたが、そっとしてもらいたい一心でできた台本もどきを結衣に渡す。

渡された結衣はなにかを感じ取ったのか、わかったと一言漏らして離れていった。

放課後の部活にはなんとかしたほうがいい、そんな風に考えながら、頭にはやはり夢のことが思い出される。

子供の頃のあかりは今よりも髪が長かった。それにやっぱり変なの子だった。

今のあかりとはやっぱり違うけど、あの笑顔は変わらない。優しいところも変わらない。

なにか貰ってるはずなのに、私はそれをかたくなに否定したいのだろうか?

京子「あー、なんだよ。よくわかんない」

気づけば時間は放課後になっていた。

結衣「京子、部活いくぞ」

京子「うん」

結衣「台本読んだけど、生徒会のみんなに見せるにはちょうどいいくらいの長さじゃないかな」

京子「そう………」

ちょっとばかり気分がネガティブになってるみたいだった。


18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 20:45:04.46 ID:vsfN+0+DO

台本を渡して私は縁側に腰掛ける。ちなつちゃんは、キスのシーンにおまかせと書いてあることに喜びの表情を浮かべていて、結衣はなんだか複雑な顔だった。

できる限り部室の中を見ないようにしたのは、あかりを視界に捉えないようにしたいからだ。

なのに………

あかり「京子ちゃん、どうかしたの?」

京子「何でもないよ」

あかりはすぐに心配してくる。あかりはそういう子だ。

あかり「でも、ほら、京子ちゃん、今日少し変だから」

京子「何でもないって、それより台本に目を通しておけよー」

あかり「わかったよ」

ようやくあかりが私から離れていって、肩の荷が軽くなった気がした。

確かに感じられる開放感に、ちょっとばかり息をもらしてから、夢のことを思い出してまただんまりした。


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 21:00:32.12 ID:vsfN+0+DO

一緒にやるべきところの練習も、あかり一人だけでやってもらった。

どうせ私がやるのは少ないから、気にする必要もないと思ったから。

部活が終わると、みんなから逃げるように帰って部屋に入る。

京子「あー、なんなんだよ。なんで、こんなことに……」

こんなことは初めてだった。

あたまの中はあかりの事だらけ、なぜにこんなにあかりのことで悩まなければならないのかと。

考えてもやはり答えは見つからなかった。

今日しなかった練習をするために台本を開く。

本当に鏡はセリフが少ないわけで、かなり短く書いたこともあって、さらにセリフは少なくなっていた。

京子「この世で一番美しいのは、白雪姫です」

簡単なセリフだった。

あかり『鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは誰?』

頭の中で、あの日のあかりを思い出した。

京子「それは赤座………って、なにをいってるんだ私は」


20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 21:14:18.81 ID:vsfN+0+DO

思わず、無意識に出てきたその名前に正気に戻った。

あかりは確かにきれいかもしれないが、そこまで名前を出すものではないと首を振った。

確実に疲れているという漠然とした考えだけがあって、ベッドに横たわって天井を見る。

あかりは、あかりは今でも私の笑顔を大好きといってくれるのだろうか?

京子「ちょっとまて、なんで私はあかりに大好きといわれることを期待してるんだ」

変なことを考えすぎている。漫画を読もうと開くと、君の笑顔は素敵だねと話すページになっていたので、思わず投げ捨てた。

思った以上に落ち着いていない、落ち着かなくてはと深呼吸を繰り返す。

でも、なんだか胸は落ち着く雰囲気はなかった。


21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 23:43:08.41 ID:vsfN+0+DO

あかりの所為でこんなことになるなんて、本当にどうかしてる。

京子「劇、やめようかな」

しかし、そんなことをしたらちなつちゃんは怒るだろうし、さらにあかりに心配されてしまう。

どうせ今週中に準備も終えられるのだし、そこまで私が頑張ればいいのだ。

無理にそう決めて、まだ早いのに眠ろうと努力して、結局いつも通りの時間に眠った。

あかり『京子ちゃんは笑顔が似合うから、あかりは京子ちゃんが元気でいられるように、元気をいっぱいあげるんだ!』

京子「あかりは元気じゃ、いけないの?」

夢の中のあかりは、私に元気をあげると言ってくれた。でも、それを聞いているのは今の私だった。

あかり『あかりは大丈夫!京子ちゃんが元気になってくれるなら、それだけで嬉しいから!』

ニコニコの満面な笑みでそう言ってくるのは、今のあかりだった。

あかり『少しごめんね』

でも、そう言ってくるあかりは、どこか申し訳ない顔をしていた。

あかり『元気になってね?』

しずかにあかりの顔が近づいてくるのを、ただ私は待っているだけで、鼻を擽るあかりの匂い。

目が覚めたときに、私は顔を真っ赤にしていた。なんていう夢を見たのだろうか。

しかもよりによって、あかりから…………

京子「…………あーあー!」

思わず枕に顔を埋めて窒息死したくなったが、玄関のチャイムに阻まれた。


22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/07(水) 23:58:16.46 ID:vsfN+0+DO

時計を見てみると、まだ2人が来るには早いという時間であった。

めずらしい来客かと、パジャマ姿のままで玄関に向かう。

この時、私は完全に寝ぼけていたし、変な夢のお陰で混乱していたと思う。

京子「はいはい、どちらさ―――」

あかり「京子ちゃん、おはよー」

思わずドアを閉めた。

そして少ししてから、ドアを開けてきょとんとしているあかりを発見した。

あかり「京子ちゃん、いきなり閉めるなんてひどいよー」

京子「す、すまん。いったい、なにようかなー、あは、あはははは」

振り絞れる限りの言葉を並べながら、どうしたものかと考える。

夢のおかげで、あかりの唇ばかりに目がいくし、心臓もバクバクだった。

あかりは私の様子に少しだけ心配そうにして、今日早くきた理由を述べる。

あかり「昨日、京子ちゃんおかしかったから、心配になって。こんな早くきちゃった」

なんだ、その恋人が心配だからみたいな理由は。

まだパジャマ姿の私ではあるが、このまま待たせるわけにもいかないし。ここで帰すと後々、結衣に何かいわれる気しかしなかった。

京子「こんな朝から、まったくアッカリーンは……」

あかり「迷惑だったかな?」

京子「睡眠妨害であったことは間違いないなー」

あかりはあかりでも、もっと強烈な内容で目を覚ましたわけで、この最中私はあかりを直視できなかった。


23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 00:15:10.31 ID:FFo2w0hDO

あかりには玄関で待ってもらい、素早く着替えるとパンを二切れほど持って家を出る。

パンを二切れほど持ってきた理由としては、道中であかりと軽い会話だけにするためである。

パン食べながら進んでいれば、あかりからはあまり話しかけてこないはずだ。

京子「キスか………」

あかり「きょ、京子ちゃん突然どうしたの?」

京子「うわっ、私なにいってんだー!今の無し、ノーカンノーカン!」

自分から墓穴を掘るとはなんという失態!

あかりはなんだか不思議な顔で私をみてくるわけで、何のためにパンを持ってきたのかと頭を抱えたくなる。

あかり「やっぱり、ちなつちゃんと結衣ちゃん、台本の通り好きにやっちゃうのかなー」

京子「そ、そう。そのことを考えてて、キスなんて言っちまったんだよー」

我ながらなんと無理矢理な方向転換だろうか。

しかしあかりは、そうなんだー。って納得してから何だか遠くを見るような目をした。

あかり「かなしい」

京子「あー、もしかしてあのちなつちゃんとのキスを思い出して―――」

私も夢の光景を思い出して、顔を真っ赤にしていた。


24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 00:25:15.93 ID:FFo2w0hDO

顔を真っ赤にしながらパンを口にして歩く私は、なんだか無性に恥ずかしくなってきた。

周りに漂う何ともいえない空気に、ちょっと居心地が悪くなった頃。

あかり「京子ちゃん、学校に着いたら一度部室に行こうよ」

そうあかりは提案してきて、その提案に私はうなずきを返した。

それにあかりは笑顔で礼を言ってきて、その笑顔に私は見取れてしまった。


28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 12:08:58.21 ID:FFo2w0hDO

朝の部室というのは、なんとも殺風景な場所である。

遠くから聞こえる他の部活の掛け声とか、そういうものが聞こえない場所にあることもあって、余計に静かだ。

あかりは早々にお湯をかけていて、まだここを出るのには30分位の余裕があった。

あかり「お茶入れるね」

京子「お湯を準備するの早すぎるって」

机に突っ伏しながら、置いてある台本に手を伸ばす。

そう言えば昨日のこと、あかりは怒っていないのかな?

劇の練習を一人でやらせてしまったわけで。

我ながらかなり身勝手なことをしたと思う。

あかり「はい、京子ちゃん」

京子「ん、ありがとう」

用意されたお茶を一口、体が温まるのを感じながら、あかりを見る。

あかりはただ私を見ながらニコニコしている。その無邪気な感じは、夢の中に出てきたあかりとは違う感じがした。


30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 12:29:55.59 ID:FFo2w0hDO

あかり「京子ちゃん、顔赤いよ?」

京子「うえっ、そんなことないぞ!」

お茶が熱すぎたかな?とか心配するあかりに、私は再び顔を真っ赤にする。

このままでは、茹で蛸になってしまうと思う。

京子「そ、それよりも、なんで部室にきたんだ?」

あかり「そうだった!昨日、あかりセリフいっぱい練習したから、京子ちゃんと一緒に合わせてみたくなったんだよ。迷惑だったかな?」

つまり、合わせをしたかったということか。まあ、このまま無駄に時間を過ごして顔を真っ赤にし続けるよりはマシか。

そんな考えで台本を手にとり、鏡のセリフをさらっと調べる。

京子「じゃあ、毒リンゴを白雪姫にあげるところまでやろうぜ」

あかり「うん、いいよ!」

あかりは少しばかりの間をおいてからセリフを始める。

あかり「この世で美しいのは、妾だけー。今日もこの世で美しいものは妾はだけのはずじゃ」

なんともあかりには似つかないキャラクターだ。
と、ここで私のセリフだ。

京子「この世で美しいのは、王妃さまでございます」

あかり「さすがは妾の鏡、そうこの世で美しいのは妾だけなのじゃー」

妾の鏡。それってあかりの鏡ってことかな。って、私はなにを考えている。

あかり「じゃあ、ここでちなつちゃんの白雪姫のシーンが入って、次の鏡さんのシーンだね」

京子「う、うん」

何だろう、とっても頭がぼんやりする。

あかり「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは誰じゃ?」

あかりがかわいい笑顔で私に聞いてくる。夢の時みたいなかわいい笑顔で。

京子「そ、それは………」

なんで、こんなに胸が痛い。なんでこんなに………

あかり「京子ちゃん、大丈夫?」

あかりが近づいてくる。


31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 12:39:28.91 ID:FFo2w0hDO

あかりが目の前に来て、心配そうな顔をしてくる。

夢で見た光景に似ていた。

あかり「少しごめんね」

そう言ってあかりの顔が近づいてくる。おかしい、これは夢なのか?

無駄に胸が高鳴る。こういうのは私があかりをからかうときに、自分からやることじゃないだろうか。

鼻にあかりの匂いが近づいて、目の前にある顔の唇を私は見つめていた。

でも、それはそれ以上近づくことはなくて、おでこに当たったあかりのおでこ。

あかり「うーん、熱はないみたいだけど………」

京子「あかり………」

あかり「京子ちゃん?」
おでこが離れそうになった。顔が離れるのが嫌になった。頭がクラクラした。

色々と頭で言い訳を考えながら、私は部室から学校から逃げ出していた。


32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 12:51:35.97 ID:FFo2w0hDO

あかり「きょ、京子ちゃん……?」

台本が落ちる音、まだ飲みかけのお茶。静かな部室に私。

走りながら、なにをしたのかを考えて、後悔して走りつづける。

まだ学校は始まらない、今日は休んでしまえ、家に帰って倒れてしまえばいい。

そう思って家の前までついて………。後は、塞ぎ込みたい。

周りを同じ学校の子達が不思議そうな顔でみてくるけど、忘れ物でもしたのかと直ぐに目線を外す。

息が切れそうなくらいに走りつづけて、やっと家に着いた。

今日は疲れてしまった。

そう思って玄関を開けると。

結衣「京子?」

後ろからそんな声が聞こえた。


33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 13:06:14.39 ID:FFo2w0hDO

なんでもない、うそをつけ。

忘れ物して、ならば玄関の中で待っててやるから取ってこい。

ちょっとしたらいくから先に、あかりが先に来たはずなのになんであんたがここにいる。

結衣は私の逃げ道を全て塞いで、私の部屋にきていた。

学校に結衣は休みの連絡をいれ、母親も事情を察したように休みの連絡を入れていた。

結衣の奴、これで皆勤賞逃したな。

少しばかりの沈黙の後、結衣は静かに口を開いた。

結衣「あかりと何かあったのか?」

京子「な、なんでそう思うんだよ」


34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 17:27:12.51 ID:FFo2w0hDO

結衣「あかり以外になにかあるなら、それはそれで安心するんだけどな。京子、この頃あかりを避けてるみたいに見えたからさ」

京子「そんなことない」

結衣「嘘だな。京子は嘘を付くときよく下を見るからな」

幼なじみだからそういうところを指摘してくる。やめてほしい、そう考えて布団の中に入る。

今さっきしてしまったことを、結衣はどう思うのか、友達だからって言えないことだってある。

あかりになにをしてしまったのか、そればかりが後悔に満ちてくる。

結衣「京子………」

京子「なんだよ」

結衣「あかりのこと、好きだったりする?」

その言葉に、私はなにも考えられなくなった。


35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 17:38:02.74 ID:FFo2w0hDO

結衣「はあ、好きなんだな」

京子「そんなこと、ありえない」

そうだ、あり得るわけがない。あかりを好きになんて、私になにもくれなかったあかりを、誰にでも優しいあかりを好きにるなんてありえない。

結衣「私ね、昔京子が私に嫉妬みたいな視線を向けてきたこと覚えてるんだ」

京子「そんなこと、したことない」

結衣にそんな視線を向けたことない。

結衣「あれは、昔私が風邪で休んで、治った日のことかな。教室に行って一番最初に声をかけてくれたのがあかりだった」

その言葉に胸が痛んだ。なんでか分からないけど、確かに胸が痛くなった。


36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 22:30:48.21 ID:FFo2w0hDO

結衣「その時の京子さ。すっごいムスッとしてた」

京子「それがなんだよ」

結衣「今思うと、あれは何に対して嫉妬してたのかなって思ってさ。でも、あの日から京子ってあまり泣かなくなったよね」

結衣はそう言って、私の言葉を待ってるみたいだった。

私はあの時なにを思ったのかってことだろうけれど。

あかりは私だけに優しいんじゃなくて、みんなに優しい。前日に私を励ましてくれたあかりは、次の日には結衣のことも励ましてて。

そこで気がついた。

京子「そっか………」


37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/08(木) 23:41:06.94 ID:FFo2w0hDO

私はあかりのその優しさが、気に食わなくて同時にとてもうらやましかったのだ。

京子「結衣」

結衣「なんだ?」

京子「私ね。今さっきさ………」

結衣「うん」

京子「あ、あかりに、き、キスしちゃったんだ………」

結衣の息が止まったように感じて、見てみると目を点にしながら固まっていた。

私自身、この発言で顔が真っ赤だというのに、結衣の所為で緊張感が無くなっていた。

京子「ゆ、結衣?」

怖くなって声をかけてみる。なんだかわなわなと震えているようで、何だろうか。とっても面白い。


38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 00:06:07.10 ID:gtqpP0UDO

結衣「ちょっと待ってくれ、口喧嘩とかしたんじゃないのか?」

京子「いや、その、昨日見た夢でさ。あかりがその、顔をだね……」

説明しながら顔が赤くなっていくのがわかって、今さっきまでもやもやしてた物の正体に、さらに恥ずかしさが増していく。

結衣「やばい、茹で蛸だ。茹で蛸がいやがる」

京子「ゆ、結衣。私、どうしたらいいのかな?」

結衣「どうしたらって、なにをだよ?」

京子「そ、それはさ。だって私、あかりにさ。一方的にキスしたんだよ。嫌われたに決まってる。それに、あかりは女の子で私も女の子なんだよ?」


39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 00:21:06.61 ID:gtqpP0UDO

あかりも私も女の子だ。それは変わらないことだ。私があかりからもらったものに気づいたとしても、これだけは絶対に変わらない。

だって今のこの私は、あかりの元気とか、そういう優しい感じとかに反発して出来上がった。それで、そんな私にもいつも通りのやさしいあかりは、気づかなかったけど眩しすぎたんだ。

鏡だからそんなまぶしい光を弾いてしまう。だから私は自分の気持ちに素直になれなかった。でも素直になったところで、性別の壁は変わらない。

結衣「京子が、その、だ。あかりにキ、キスしてしまったことは変わらないことだよ。でも、残酷なこというけどさ。あかりが京子を許しても、京子のことを1人の人として好きって言ってくれるかはわからないよ」

京子「そうだよね、ははは」

結衣の言葉は確かにその通りだった。あかりの性格を思えば、許してはくれると思う。

だけど、私の気持ちに応えてくれるかはわからない。


40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 00:34:28.59 ID:gtqpP0UDO

結衣「で、京子?」

京子「な、ななな、なに?」

混乱している私に、結衣は落ち着けと促してから、これからどうするのか聞いてきた。

今から謝りに行くのは無理だ。頭と体が全くと言っていいほど動かない。恋愛マンガとかのそういうシーンを読んで、こんなことある訳ないじゃん、と笑っていた私に何か言ってやりたい。

でも、けじめはつけないといけないんだろうな。

結衣「劇の事もあるし、ここまで準備して放棄するのは京子らしくはないぞ」

京子「そういうときは、劇はやっぱりやらない事にしようか、とか言うもんじゃないかな?」

私の言葉に結衣はクスッとしてから、あかりだったらそう言ってくれるだろうが、生憎私は京子を甘やかす気はないよ。って言った。

強気な性格は昔から変わらないみたいで、私も結局弱虫で泣き虫な所はあまり変わってないみたいだった。

だって、こんな風に相談しながら私は泣いているのだから。

泣き虫京子は、まだまだいるんだなー。って少しだけ泣き虫になった。

京子「ゆ、結衣、私だめな子だね」

結衣「ああ、そう思う。だからちゃんとするんだぞ」

京子「…………うん」

泣きながら、私は静かに頷いてあかりのことを思う。


41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 00:43:45.56 ID:gtqpP0UDO

あかりはみんなに優しい、それはあかりの一番いいところだ。だから、あかりが白雪姫でやりたい役を聞いて、王妃や鏡でいいって言ったのは本心からじゃない気がした。

あかりは、誰かに本当に甘えたことなんて無いんじゃないかって、身勝手に考えて私に甘えてくれたらいいなー、なんて思う。

結衣「京子、もうどうするか決めたのか?」

京子「うん、ありがとう結衣」

結衣「まったく、世話の焼ける幼なじみだよ。今日はゆっくりした方がいいよ。私は学校に今から行くから」

遅刻してでもいくとか、その根性は凄い。今さっき休みの連絡を入れてたはずなのにさ。

結衣が去った部屋の中、疲れ切った頭を休ませるように、私は目をつぶる。

今日は夢が見られなくても良さそうだ。


42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 00:53:16.54 ID:gtqpP0UDO

部屋の中、私の唇とあかりの唇が重なってる。あのときの光景だ。

あかりの目が見開いて、持ってた台本が落ちる。

私のキスはふれる時間の長いキスで、終わったときにはあかりはきょとんとしていて、私はその場から逃げ出した。

目覚めると昨日、あかりが家にきてくれた時間より10分早い時間だった。

恐ろしいくらいに、私は昨日のことを鮮明に覚えていたいようで、翌日の夢に見るとは。

京子「アッカリーン」

思わず叫ばずにはいられなかった。

なんだか、あかりの名前を呟くと胸が落ち着く。これは本格的に危ないのではないという気持ちになりながら、着替えて準備をする。

こんなわずかな時間で、これほどの心境の変化に私もびっくりしている。

でも、そのけじめを私はつけるつもりだ。

京子「やっぱり、怖いなー」

これから学校の部室に行く予定である。


46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/09(金) 12:18:16.80 ID:gtqpP0UDO

昨日眠る間際に結衣から電話があった。

内容は明日朝一番に部室に来いで、結衣が微力ながら私に協力してくれたということだろう。

さて、どう話を切り出せばいいのだろうか。そんなことを考えながら、妙に落ち着いているのは、昨日で吹っ切れることができたからかもしれない。

いや、吹っ切れるとかそう言うのは私の気持ちをはっきりあかりに伝えてから…………

京子「………これは酷い」

鏡に映る私は顔を真っ赤にしていた。

これは相当危険だ、ミラクるんとライバるんの対決を初めて見たときより危険だ。

京子「しっかりしろ私!」


48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 00:14:32.50 ID:9WsvdVQDO

これほど気合いは、締め切り間近の時でさえないというくらいだ。

鞄に入れた教科書の中身など気にしていられない。これで、今日の教科を入れ忘れたら、あかりの所為にしよう。

そうだ、あかりの…………

京子「私は子供か!」

また顔を真っ赤にして、母親に不思議がられた。

深呼吸を一度してから、私は玄関の扉を開く。そこには誰もいないのはわかっていたので、そのまま勢い良く通学路を駆け抜ける。

確かに、あかりが私を拒絶することもあるかもしれない。

そういう悲しい結果だってあり得るのだ。

だけど、それを気にして動かないのは、今の私らしくなかった。

鏡の私なんだ。みんなから貰ったものを全部使ってしまえばいい、あかりにこの思いを伝えたいのは、間違えなく私の意志なんだ。


49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 00:22:18.20 ID:9WsvdVQDO

学校に駆け込んで、教室に向かうことなく部室に向かう。

早く、部室に駆け込みたいと、見えてきたドアに手をかけて勢い良く開こうとして、開かなかった。

京子「あれ、ってやっぱり早く来すぎたか!」

今の時間は朝練が始まるよりも10分は早い。昨日は今より20分も早くきていたのだから、まだ朝きている先生もあけていない時間なのだろう。

しょうがないから職員室から鍵を借りてくるかと、振り返ろうとしたところで足音が聞こえた。

それは立ち止まったような音。

ゆっくりと振り返ると、特徴的な団子が二つ目に入った。

胸が……

確かに……

大きく高鳴った………


51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 00:35:09.44 ID:9WsvdVQDO

京子「あ、あかり……」

どこか気まずそうに下を向いたあかりが、そこにはいた。

昨日の事を思い出して、私の中に後悔と同時に恥ずかしさがこみ上げてくる。

しばらくの沈黙が過ぎて、いつの間にか朝練開始のチャイムが響く。

京子「あ、あかり、まずはさ、中入ろうぜ?」

緊張で声が震える。いつもみたいに話しかけられない歯痒さと、あかりに無視されてるんじゃないかという思いで、心がぐらぐらする。

あかりは頷く事もなく、私の横を通り過ぎる。どうやら鍵を借りてきていたようで、部室を開けるとそのまま中に入っていった。

やっぱり、嫌われてるのかもしれない。仕方のないことだ。

心の中がズキズキと痛む。だが、私がやったこと、自業自得だ。

遅れて部室に入ると、あかりは座って待っていた。

恐る恐る、私は対面に座り、あかりの様子を見る。

いつもはあがっている顔も、今は下を向いていて、表情はわからない。

それが私の不安を一層強くする。嫌われた、軽蔑されるかもしれないし、もう友達でもないって言われる可能性だってある。


52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 00:44:40.83 ID:9WsvdVQDO

覚悟は決めていた。けじめはつけるって言ったじゃないか。

心を叱咤して、云うべき言葉を口から絞りだそうとするけど、怖くなる。

情けない、言わなければわからないままで済むって、ずる賢い心がある。

あかりに、伝えたい。ごめんなさいと、あんな事をしてごめんなさいって。

そして、あかりに好きだって、私はあかりが大好きだって伝えたいのに。

まだ、私の心は動けない。なんで、あの覚悟はどこにいったの?

体中が痺れたように動かなくなる。

喉もカラカラになったみたいで、私は下を見ながら切り出せないことに情けなさだけを蓄積させる。

泣き虫、弱虫、意気地なし!

気づけば、私は泣いていた。

情けなく、涙を流しながら、それでも怖くなって、なにも言い出せないまま、泣いていた。

こんなの嫌だよ。素直になるって決めたのに、こんなの………

「なんで、泣いてるの?」


53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:03:19.34 ID:9WsvdVQDO

横から声が聞こえて、でも私は顔を上げられなかった。

情けない、一押ししてもらってやっと声が出せる。

京子「き、決めたのに………、そうできなくて、私、弱虫で泣き虫で、意気地なしだから、怖いの」

怖い、あかりに拒絶されることが。怖くて一歩を踏み出せない。

そんな私に、あかりは語りかけてくる。

あかり「あかりね。今困ってることがあるんだ」

どこかやさしい声で、友人に気軽に相談するように、優しい音色で。おかしいよ、私はまだ謝ってもいないのに、なんでそんな優しい声を掛けられるのさ。

あかり「あかりの大切な人が、あかりの為に苦しんでて、それで泣いてるの。あかりの為になくことなんて無いのにね」

あかりが悪いんじゃないのに、何でそんなこというんだ。私が悪いのになんで……

京子「な、なんであかりは、そんなに優しくしてくれるのさ」

その私の言葉に、あかりはすぐに答えた。いつも通りの声で。

あかり「京子ちゃんも、あかりの大切な人だからだよ」

その言葉に顔を上げてしまう。あかりが今どんな顔をしているのか、何となくわかってしまったから。

目線が合って、そこにはいつもみたいに優しく笑うあかりがいた。

軽蔑なんてない、ただいつもみたいに優しいあかりがそこにいて、私は甘えるようにあかりの胸に顔を埋める。

限界だった。怖くて、でも云わなくちゃいけないって思う心が絡み合ってる。

もう、一歩踏み出せばいいのに、まだ怖いのか私は。

あかり「京子ちゃん、大丈夫だよ」

あかりの手が背中に回されて、暖かさを感じる。私の中の心がその怖い道に足を踏み入れた。

京子「ごめん、ごめんね」


54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:20:24.76 ID:9WsvdVQDO

やっと出てきた。

京子「あかり、ごめんなさい!あんなことして、私が私が弱くて自分勝手にした。あかりの気持ちなんて考えないであんな事をした。ごめんね、ごめんね……」

ああ、なんて酷い言葉の羅列だろうか。

もう謝って謝っても、言葉が見つからない。私の言語力は無さ過ぎる。

そんな私の背中をあかりは優しくさすってくれる。

あかり「京子ちゃん、ありがとう。もう大丈夫だから、泣かないでね。可愛い京子ちゃんが台無しだよ」

そう言ってくれるあかりに、私は甘えているのかもしれない。でも、今さっきの言葉、京子ちゃんも、っていう言葉に私は少しだけ悲しんでいた。

それは、やっぱり特別ではない証なのだろうから。

あかりの制服に涙の後が付いて、泣き続けることにも疲れた頃。私はまだあかりに抱き付く形のままだった。

あかりは私が落ち着くまで待ってくれているようだった。

あかり「京子ちゃん、落ち着いた?」

京子「もうちょっとだけ………」

私の願いに、あかりは小さく頷いてくれた。

あかりの匂いを感じながら、私は云うべきもう一つのことを口にする。

京子「あかり………」

あかり「どうかしたの京子ちゃん」

京子「私、あかりのこと……………」

一気に心拍数があがる。でも、心地良い感覚だった。

ああ、あかりってホントに優しいんだ。だって、私もこんなに優しい気持ちになれるんだもん。

これは今まで否定してたあかりから貰った優しさなのかもしれない。

まだ自分にしか使えてないけど、私の心を支えてはくれてる。

言葉にしたほうが良いよと、私を応援して押してくれる。

そんな優しさに応えるように。


55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:21:59.09 ID:9WsvdVQDO





――好きだよ―――


56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:30:51.79 ID:9WsvdVQDO

やっと言えた。

そしてそれを聞いたあかりは………

あかり「えっ、き、京子ちゃん!?」

今さっきの優しい顔なんかどっかに行ったみたいに、恐ろしく混乱していた。

なんだこれは!

京子「ちょ、そこはさ。わ、私も好きだよ。とか、そういうこと言うんじゃないかね!」

あかり「そ、そんなこといきなりいわれたって、ええっ、京子ちゃんがあかりのこと好きって………」

なんだか、今さっきまで悩んでいたことが、なんか意味ないことのように思えてきた。

あかりはこんな子だ。たがら私はあかりが好きになったんだ。

あかり「京子ちゃん、その私、えっと、まだ、よくわからなくて」

京子「わかってるよ。ただ、私はあかりのこと好きだよ。もちろんlikeじゃなくてloveの方でだよ」

あかり「そ、そうなんだ」

あかりは団子を触りながらソワソワとしていた。これはなかなかにかわいい姿だと思いながら、ちょっとばかりショックを受けた心を繕う。


57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:42:48.01 ID:9WsvdVQDO

このままあかりは、自然と私と付き合うように動くかもしれないけど、それが優しさとかそういうのじゃないとは言い切れない。

私の言葉にすぐに答えてもらいたくはなかった。あかりにはあかりの思った答えを聞きたいから。

京子「まあ、答えは劇が終わったら聞くよ」

あかり「京子ちゃん、もういいの?」

気づけば、私は立ち上がっていた。涙の後は残ってるけど、心の中は無駄に爽快だった。

だから一つ聞きたいことがあった。

京子「あかりはなんで王妃とか、鏡をやりたいって言ったんだ?」

あかり「みんながやりたくない役かと思ったからだよ」

京子「やっぱり、あかりは優しいからなー」

あかり「そんなことないよ」

そんなあかりの手を掴んで私は言う。

京子「いいや、優しいよ。だから私はあかりが好きになったんだから。だからその証拠をあげる」

私はそう言ってから、目をつぶる。正直、待つのはやっぱり怖い。


58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:46:58.97 ID:9WsvdVQDO

私が求めていることをあかりは理解してくれるだろうかと、思った矢先に唇に一瞬の感触があった。

あかり「京子ちゃん、あかりの答え。ちゃんと劇が終わったら伝えるね」

そう言うあかりは優しい笑みを浮かべていた。


59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:52:27.06 ID:9WsvdVQDO

劇は結果的に喜劇的に終わった。

部室の中、観客の生徒会一同の前でなんとも即席なセットを使っての事だったので、劇終了間際に崩れたのはまさにひどい落ちであった。

その後、私は一人部室で待っていた。

答えを聞くために。

それがどんな答えであっても、私は後悔しないだろう。

だって、それが私の望んだ事なのだから。

静かに扉が開く。


60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:53:26.25 ID:9WsvdVQDO




京子「アッカリーン」


61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/10(土) 01:56:33.05 ID:9WsvdVQDO

いつも通りになった私であかりの答えを待とう。

あかりを好きっていうこの心と一緒に。




お わ り


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■コメント

 [名無しさん]

やればできるじゃん!

 [名無しさん]

京あか京あか

 [名無しさん]

結果をぼかすのもいいもんだね~

 [名無しさん]

タイトルからは予想できない良さがあったw

 [名無しさん]

いいぞ
なんか途中キスしたとこわかりにくいけど
いいぞ

 [名無し]

京子の心理描写を上手く描けてたと思う
■コメント


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